論 考

いまも啓蒙の時代である

 15世紀から18世紀は、いち早く世界に雄飛した欧州諸国が重商主義(mercantilism)を強力に推進した。

 重商主義は、国家保護・干渉のもとで有利な貿易をして、おおいに儲ける戦略で、帝国主義・植民地主義と等しい。

 18世紀になると、力に頼って海外で荒稼ぎすることにばかり注力せず、国内産業をきちっと育成すべしという気運が高まる。

 1つは重農主義である。富の源泉は農業にありというわけで、農業育成が盛んになる。もう1つが普遍的自由貿易論である。各国相互に自由に交易するべきで、お互いに国内産業の保護・奨励によって交易を制限しない立場である。

 貿易は単に輸出すればよろしいだけではなく、わがほうが得意でない生産物は輸入するほうが国民経済に貢献する。

 この流れは20世紀に入って2度の世界大戦を経て、自由な交易が世界平和に貢献するという考え方をさらに育てて今日に至っている。

 欧州においては単にモノの交易だけではなく、人の交流も盛んにした。EUは、まさに世界の人々が模範とするべき偉大な取り組みである。

 国境があるから戦争も起こる。たとえば「アメリカ・ファースト」のような思想は愛国主義を気取っているが歴史逆行の最たるものだ。

 遠からずトランプが掻き回す時期は幕を閉じる。わたしたちは、突発的に登場した無知蒙昧な乱暴者に精神を壊さないように、これを反面教師として、新たな時代に備えたい。