みんなのコラム

よくぞ田舎に・・・

伊東正人

 8月の終わりの土曜日の朝6時、愛犬タロウの散歩で黄金色の田んぼに囲まれた道を歩く。朝の6時といえども油断は禁物、紫外線対策を怠ってはならない。日焼け止めを顔に塗って野球帽を目深に被り、一見怪しいヒト風な出で立ちである。

 吾の周りを見渡せば人家も疎ら。刈り取られた田には餌を探す白鷺の姿。蝉や野鳥の声、鈴虫の鳴く声、草むらを抜ける風の音、それしかない、それしか聞こえない。吾の前後左右100mの空間には吾と愛犬以外に哺乳類は存在しない。4万㎡(4千坪)を独り占め。ここが銀座の山野楽器本店前だったら1兆6千億円するな、などと下世話な妄想が水を差す。

 この贅沢な時間と空間、よくぞ田舎に住まいけり。