みんなのコラム

スポーツ界にも経営のプロを

司 高志

 スポーツ界はアメフットの話題で持ち切りだが、相撲協会もここしばらくおかしなことが続いていた。

 先の地方巡業で挨拶中の市長が土俵上で倒れた。この市長を救護しようと土俵に上がった女性医療関係者に対して、行司が土俵から降りるようアナウンスしてしまった。

 予備知識として、相撲は神事であって、土俵には神がいるので女性は土俵に上げられないとされている。普段は土俵に神はおいでにならず、土俵を作ってのち、神迎えや神送りをする。土俵に神が宿るのは、神迎えから神送りの期間である。

 さて、急病人がいれば医療行為が優先するのは、当たり前のことである。ところが、神迎えが行われた土俵の上で急病人発生という緊急事態が起きて、女性の医療関係者が土俵に上がり応急処置をしようとしたことに対して、土俵から降りるようにとのアナウンスになった。相撲協会によれば、若い行司が客のヤジにあおられてつい、アナウンスしてしまったとのことであるが、ヤジった客はいなかったという情報も流れている。

 また巡業の責任者についても、トイレに行っていたので本件は知らないという報道になっていたようだが、これも土俵の近くにいたという情報もある。土俵の近くにいたのであれば事態の終息を図るべきだし、本当にトイレにいたのならば、巡業の責任者がセレモニーの最中にトイレに行くなどは準備不足で、自覚が足りない。仮に女性の医療関係者がアナウンスに従って土俵から降りて救命しなければ、後で裁判になったりすると訴えられる可能性は、相撲協会ばかりでなく女性の医療関係者にも及ぶ。

 市長が土俵の外に搬送された後、土俵に大量の塩をまいたとの情報も寄せられた。相撲協会では、けが人が出たときなどに行う行為であると説明したが、筆者には、女性が土俵に上がった『汚れ』を清める意味があったようにも見えた。

 これで終わればよかったが、例年は女児を土俵に上げていた「ちびっこ相撲」で、女児の参加を見合わせとした。募集者側は例年通り女児も含めた募集を行ったが、その後に女児は参加できないことにされていたことが発覚した。相撲協会は昨年からの決定であったと言っている。また、救命処置の件では、医療関係者であっても女性を土俵に上げるのが嫌なら、救急対応の男性医師などを配置しておくべきである。今回のことがあってから初めて、リングドクターのようなものが存在しないことが分かった。

 このような相撲協会の状態で、力士や客の安全が守れるのか、危機管理対策は大丈夫なのかと問いたい。東京五輪に向けて外国人観光客も来るようになるので、テロ対策なども必要になるだろう。待ったなしで、巡業の危機管理を実施していただきたいと思う。

 ちびっこ相撲で女児を上げない件は、協会は女児の安全性に配慮したと言っているが、その変更自体は去年から決めていたという。これが普通の企業であれば、ホームページで事前に変更をお知らせしたり、募集を行う人には、事前に事情を説明するのが普通である。それをすっ飛ばしてメディアに取り上げられると姑息な言い訳をして撤回する。相撲に関しては何をやってもOKと思っているかもしれないが、公益法人である以上、世間から注目されていることを忘れてはならない。案の定、数人の主婦が「女性差別」として公益法人認定取り消しの署名を集め、内閣府の公益認定等委員会に提出した。

 一連の原因は、相撲の強い人しか組織の経営に参加できない仕組みにあるとみている。経営陣の社会的な経験値の不足を補うため、外部から相撲以外のプロを呼んで、相撲協会の経営にバランスをとるべきである。それが無理なら公益法人を返上して、株式会社等の私企業として興行するべきであろう。