論 考

リアル考

 現実をリアルに見るという意義は、単に、現実を描写するのではない。それでは、現実をなぞって反復するだけであって、いわば景色を眺めているのと同じである。

 そのような見方をしていても、なんら発見がないし、現実に停滞するのみだ。

 これは歴史の見方でも同じだ。学校で教わる歴史は、大概は年代記であるとか、英雄豪傑の伝記的足跡を辿っている。

 もちろん、それらは事実(fact)である。事実には原因(cause)があり、さらに大切なことは、事実がいかなる効果(effect)を生んだかという問題である。

 現実だろうが、歴史だろうが、そこにある素材(事実)を通して、なにか、ある「もの・こと」を作り出す。これがリアルに見る意義である。

 リアルに見るとは、発見することと等しい。かくして価値が生まれる。