週刊RO通信

超大国的世界秩序の転換点

NO.1224

 ワシントンポストは「(AはTの)忠実なsidekick(格下の相棒)を演じた」と報じた。以前、ブッシュJr.大統領を訪問した小泉氏は「sergeant(軍曹)」と呼ばれたから、それよりはマシか?

 1960年代には、「ゴマをすりましょ陽気にゴマをね」とハナ肇とクレージーキャッツが歌った。韓国3大紙は、いずれも日本の「おもてなし」効果! を半ば羨望を込めて皮肉った。「圧巻は、イバンカを夕食会場でAが立ったまま13分間も待ったが、日本の新聞はなにも書かない」。

 少なくともご両者は性格的にもよく似ている。なにごとも自分中心で、他者にとって、彼らが繰り出す言葉が信頼できないことも含めて。

 さらにワシントンポストは「巨額の対日赤字について日本を叱った」と書いた。つまり、政治家・財界人は反論もせず黙ってご意見拝聴していた模様である。主体的には「聞き流した」という理屈づけもあるが——

 とくに目を付けられたのは日本車だ。日本でアメ車は1台も売れていないと憤まんやる方ないのである。しかし、アメリカ国内で販売している日本車の7割はアメリカで組み立てられているくらいは指摘すべきだろう。

 まあまあ、「アメリカ第一」を唱えるHeadstrong manだから、軽くいなして、誰も見ていないところで舌を出すという手もある。いわく、「相手の顔を立てる」という、下世話的技術が役に立ったとみるべきかも。

 トランプ氏は韓国国会演説35分間中7割を北朝鮮体制の批判に割いた。――北朝鮮は野蛮な独裁政権。孤立させるために力を合わせねばならない。中ロは北朝鮮を支援してはならない・供給してはならない・受け入れてはならない。ならず者政権・暴君・偶像化・残酷な独裁者・監獄国家・地獄・強制労働etc.――毒舌・悪罵の炸裂であった。そして、「わたしは力を通した平和を望む」とも語った。

 さて、締めの米中首脳会談はどうであったか? まず、米中2,500億ドル(28.4兆円)の商談成立。アメリカは、一帯一路に協力する。「1つの中国」を確認する。そして、対北朝鮮問題も実に穏当に扱われた。

 習氏は一貫して「非衝突・非対立、相互尊重、協力」を中米関係の基本としている。「1つの中国」堅持は中米関係の政治的基礎としている。狙い通り、共通利益拡大路線の文脈で米中首脳会談が演じられた。

 中国は「多分野にわたる重要なコンセンサスが得られた」と報道した。習氏は「トランプ氏の歴史的中国訪問が成功した」と語った。2ショットでは、習氏はすべてにこやかだが、トランプ氏の顔色が冴えないようにみえた。

 北朝鮮問題におけるトランプ氏の日韓中における態度は著しく異なる。戯画化すれば、日本では決起大会、韓国では宣戦布告、中国では(馬が)鼻面を撫でられて足踏みする。2国関係がそれぞれに描き出されたようだ。

 こじつければ、卑屈外交(日)・理屈外交(韓)・不屈外交(中)になる。問題状況は2国関係における力の不均衡である。力が圧倒的格差に在る場合、先を見越すから卑屈になるし、理性に訴えようとすれば理屈になる。

 そもそも超大国は、軍事力・経済力で他を圧する。いまは剥き出しの力で外交する時代ではないはずだが、力持ちがせっかくの力を使わずにおくほど謙虚かつ道義的でないのも、遺憾ながら事実である。

 さらに遺憾ながら世界秩序は大国、とりわけ超大国が求める秩序を形成している。超大国は現状秩序を維持したい。そこへ小たりといえども秩序を変更したく異議申し立てする国が登場した。

 手っ取り早く、軍事力の核兵器で大国の仲間入りする戦略である。大国だけが核兵器を独占する権利はないという理屈だ。これ、理屈ではその通りだから理屈で抑え込むことができない。

 歴史的に眺めると、世界秩序維持の柱だった超大国の力が落ちてきたのである。超大国は現状維持、小国は現状変更が、それぞれの目的であり、平和の維持は目的でなく手段である。第二次世界大戦前とよく似てきた。

 支配力が低下した超大国が独走するのは危ない。アメリカは好むと好まざるに関わらず、中国・ロシア・EUとの合意をめざさねばならない。3国との首脳会談は、その意味で大きな歴史的転換を照射したと思う。