筆者 高井潔司(たかい・きよし)
アメリカとイスラエルが共同作戦で、イランを攻撃、イランの最高指導者、ハメネイ師をはじめ革命防衛隊、軍の幹部を殺害した。イランの核開発を阻止するのが名目だが、その問題をめぐってまだ交渉の最中に、交渉相手国の首脳部を殺害するというのは、テロ行為としか言いようがない。
だが、テレビは、絵になるその攻撃とイラン側の反撃の模様を伝え、またこの地域が日本の石油供給源であることから、その影響について専門家の分析を大々的に報じている。しかし、この攻撃についての評価、特に日本政府の評価や対応についてほとんど報道していない。
一方、新聞社説はさすがにそれなりのコメントをしている。朝日新聞は「自分の意に沿わない国家元首は武力で排除する。こんな無法がまかり通れば、対等な主権国家が共存する国際社会の秩序は成り立たない」と真っ向から批判した。毎日新聞も「敵対国の元首だからといって殺害が許されるわけではない。『法の支配』に反する蛮行である。国際秩序を破壊する大国の暴走を止めなければならない」と、書き出しからアメリカの攻撃を非難した。
一方、読売新聞は「米国は1月にベネズエラを急襲し、反米のマドゥロ政権を転覆させた。意に沿わない国家指導者を軍事行動で排除する斬首作戦を、中東の大国イランでも決行したことに、驚きと憂慮を禁じ得ない」と。その憂慮の姿勢は示しているが、「イランはベネズエラと国の規模も国情も異なる。米国の期待通りの展開となる保証はない」と、期待通りに進めば賛成とも受け取れるあいまいな表現だ。
三紙の社説に共通しているのは、今回の攻撃に対する日本の対応にコメントのないことだ。今や官報化している新聞だから、一般報道では、日本政府の反応は伝えている。毎日新聞の報道によると、こうだ。
「茂木氏は1日未明、外務省で記者団から米国の行動について支持・不支持を問われると、答えずに「いずれにしてもイランによる核兵器開発は決して許されないというのが日本の一貫した立場だ」と述べるにとどめた。木原稔官房長官も1日未明の記者会見で「(核開発を巡る)米イラン間の協議はイランの核問題解決に極めて重要であり、我が国として強く支持してきた」と指摘したうえで、「イランは核兵器開発および地域を不安定化させる行動をやめるべきだ」と述べた。
外務省幹部は「日本はG7の他国ほど厳しくないかもしれないが、従来よりイランを非難している」と説明する。
茂木氏って誰? と毎日新聞に問い合わせたくなるほど存在感のない外務大臣だが、この報道を見ても、アメリカの攻撃をどう考えるのかという、質問に答えず、当たり障りのないコメントで逃げているだけではないか。外務省幹部のコメントも同様に全く意味をなさない。要は、法も秩序も破壊して恬として恥じないトランプ大統領に対して、何も言えないということだろう。日頃、アジアの関係諸国に対して、「法と秩序を重んじる開かれたアジア、太平洋」などと称して、中国包囲網の形成を呼び掛ける日本だが、全く説得力がなくなってしまう。
イランの核開発は批判するのは当然のことだ。だが、今回のような攻撃を肯定していたら、その抑止力としてアメリとは異なる体制を持つ諸国は核開発をするしか手がないだろう。実際、北朝鮮が核開発とアメリカに届く長距離ミサイルの開発を進めているのは、現体制を維持するための抑止力として開発しているのだ。
高市首相は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」の復活を目指すと宣言しているそうだが、日本外交の現状は、「アメリカの破れ傘の下で雨宿りする外交」ではないかと言いたくもなる。
さらに嘆かわしいのは、それを報じているメディア側に批判の姿勢が感じられないことだ。
