筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
アメリカでは、大企業経営者のトランプ詣で、「帰順」する動きが目立つ。今度は、メタのマーク・ザッカーバーグCEOが、ファクトチェック廃止を表明した。
大献金も続いている。献金持参でトランプ詣でするのを見ていると、どう考えても格好悪い。アメリカ的実用主義(プラグマティズム)、現実主義(リアリズム)といえばそうなんだろうが、日本的社会通念からすれば、ギャングに見かじめ料を収めているのとまったく変わらない。
かつてヒトラーは、暴力団が政治を乗っ取ったと批判されたが、わたしの目にはそれとまったく同じにしか見えない。
パナマ運河の管理権を得るとか、デンマーク領グリーンランドを手に入れるとか、そのために軍事力行使も排除しないなどと恫喝するのが、お得意の交渉術だとしても、程度が悪すぎる。発言だけで首が飛んでも不思議ではない。
プーチンの戦争を止めさせると豪語するが、トランプとプーチンはものごとの考え方が同じだ。ギャング同士が手打ちでもするというのか。
E.マスクの悪乗りも気分が悪すぎる。頭がいい、構想力がある、カネもある。やりたいことをやってきた。次は、トランプの後釜に座ってやろうと考えているのかしらん。
トランプを大統領にした、とくに中西部・南部の白人労働者は、ハリスや民主党のデモクラシーが進歩的過ぎると批判したのだという説があるが、いかに自分たちが置いてけぼりくらっているという不満からにしても、選んだ人間が何をしでかしても了解とはいかないだろう。
冷静な分析? としては、トランプ流交渉術であって、今後の取引を有利にするために事前に喧伝これ努めているのだという説もある。しかし、国連無視どころか、国際秩序を破壊するごとき発言の連発を冷静ぶって受け止めるべきではない。ダメなものはダメだ、きっぱり意思表示しなければならない。
日本製鉄が振りかざす「正論」など、完全空振りかもしれないが、わたしはこの際、おおいに共感する。ただ尻尾を巻いて後戻りする必要はない。堂々と論陣を張ってもらいたい。
要するに、このままトランプ流がアメリカの思考・行動になるのであれば、こんな連中と世界秩序維持でございますと言えるか。アメリカの価値は下がる一方だろう。
さて、強ければギャングにでも低頭するのか。武士道は、弱きを助け強気をくじくことだったなあ。日本は国際協調に尽力せよというのが新聞各紙の論調だが、悪いことと良いことの区別を放棄して協調できるものでもなかろう。