筆者 曽野緋暮子(そのひぐらし)
今年の厳しい酷暑で8月の立山登山以降、8月、9月と里山歩きも日頃のウオーキングもできていない。
そんな中、紅葉登山合宿の話が浮上した。雑誌やテレビを見ていると苗場山山頂の池塘が拡がる草原が素敵で苗場山に行きたいと声を上げたところ、なんと! 山仲間から「いいね」と次々に返事が来た。おまけにリーダー達がせっかく新潟県まで行くのに1座だけではもったいないと言い出した。今年は酷暑だったので紅葉は遅れるだろうとの予想で10月下旬に行くことにした。山小屋の管理人さんからは「アイゼンは要らないと思うけど雪を覚悟して来て下さい。」アドバイスをもらった。
最高齢81才、最年少74才の総勢7名だ。今年は高齢者の登山事故が多いので、安全第一登山をモットーに計画を立てた。2年前と同じく知り合いが所有する越後湯沢のリゾートマンションをベースキャンプにする。
苗場山2145m、日光白根山2578m、武尊山(ほたかやま)2158mの3座を目指すが、休養日を設定して贅沢な7泊8日の日程だ。これってリタイアした人間の特権かな。
苗場山は日帰りする人が多いらしいが、余裕を持って山頂泊とした。お天気に恵まれ、山頂泊は大正解だった。山頂付近になると霧氷をそこここで見ることができた。気温が下がっている証拠だろう。チェックインする前に山小屋に荷物を預けて展望台に。峰々と霧氷が素敵だ。リアルで霧氷を見るのは初めてだ。夕食の前に宿の人から「もうすぐ夕陽が見えますよ。」と言われてダウンジャケットを着て外に出た。夕陽に映える霧氷の素晴らしさは圧巻だった。
マイナスの気温なので夕食のビールも不要(笑)、20時就寝。翌朝5時半に寒さ対策を万全にして展望台で日の出を待った。次第に空がオレンジ色に染まり、太陽が顔を出す。山の峰々を照らしながら、霧氷をピンクに染めていく光景は歩いてここまで来た人にだけのご褒美だ。
それにしても、年齢に関わらず女性のソロ登山者が多いのには驚いた。確かに危険の少なそうな山ではあるが、「山は山」と登山を始めた頃にリーダーから言われた言葉が頭の中でリフレイン。
下山後早々にお風呂だ!!! このマンションは最上階に大浴場がある。山々を眺めながら大浴場に入れるって幸せだ。翌日を考えて早めに就寝。
翌日は日光白根山を目指す。2000mまでロープウエイが運んでくれる。ロープウエイ山頂駅付近はレストランや土産物店、散策路もありここでも十分楽しめそうだ。山頂まで約600mだが、急な岩場で約3時間かかった。お天気も良く山頂付近は大勢の人で賑わっていた。山頂から男体山、中禅寺湖が奇麗に見えて清々しい気分だった。
翌日は休養日。ゆっくり起きて洗濯と掃除、食料品の買い出しだ。洗濯はマンション付帯のコインランドリーを使う。乾燥機もあるのでほぼ乾く。洗濯機、乾燥機共に1回200円。2年前100円硬貨が足りなくて困ったので今回は予め100円硬貨を用意していった。ところが、洗濯機、乾燥機共に電子決済に変わっていた。洗濯機のQRコードをスマホで読み込み、LINEで友達登録。その後1回ずつスマホでQRコードを読み込んだら稼働する。同時に200円が引き落としになる。
東京から1時間20分のこのマンションには定住されている方も多い。大浴場でお話を伺うと駐車場も、マッサージ器も同様で面倒になったと一様に言われていた。回線が遅い時に何度か読み込ませてしまうと、そのたびに200円が引き落としになるそうだ。管理人さんに言えば返金されるらしいが、昭和世代にはなんとも馴染まないなあ。
最後の山、武尊山は計画歩行時間が8時間。3座目で8時間はちょっときついかも、雨だったらパスしようと、後ろ向きの気持ちで朝を迎えた。
苗場山、日光白根山と比べると圧倒的に人が少ない。午前中数人の登山者に会ったが、午後からは全く人に会わない。百名山なのに標識も少ない。
しばらく歩くと鎖場が次々と出てくる。一枚岩の鎖場は厄介だ。かなりへとへとで山頂に到着。雲が沸いてきて見晴らしも今一だ。予定時間を大幅に超えているので昼食を早めに済ませて下山する。
5か所の鎖場を下りるのは私達には厳しいと判断したリーダーから鎖場を通らない巻き道を提案されて、巻き道を下る。最初は稜線歩きで気持ち良かったが、歩いても、歩いても山の中、下りの標識が見えない。リーダーが地図と睨めっこして進む。
16時前にリーダーからヘッドランプ装着の指示があった。ヘッドランプの常備は山歩きの鉄則だが、実際にヘッドランプを装着しての山歩きは初めてだ。何度か細い川を超えたが、最後の川で右足がどっぷり川の中に。でも、平気な顔で歩き続ける。19時半やっと駐車場に到着。朝から約12時間歩き通しは厳しかった。疲労困憊でこの日の夕食は外食にした。
翌日、「来た時よりも美しく。」で念入りな掃除、寝具の洗濯をしてから打ち上げに豪勢なランチ。辛い山歩きもあったが、やっぱり楽しい合宿だったなあ~。今回はダメージがなかなか抜けなかったが、ボツボツ来年の山を決めなきゃという気持ちになってきた。