筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
政治資金規正法改正の自民案がきわめて不評だ。長い時間をかけてきて、依然として政治資施政を金を透明にするという気がないのだから、話にならない。岸田的火だるま論は、世間の批判に対して火だるまになる覚悟を表明したらしい。そう考えれば正直だということになる。
公明党が当初の姿勢を捨てて自民党案支持に回ったのも意外性がない。この党は、立場が煮詰まってくると、自民党の下駄の雪でいくか、自前でいくかの選択をするわけだが、時間が過ぎるにしたがって緊張感が薄くなった。大事なところでは、馬の鼻先を変えさせるはずであったが、どうでもいいやという決断をしたことになる。
公明党はすでに与党以外では生きる道がないと考えるようになったのだろう。ちがう表現をすれば、なんとか総選挙も乗り切られる、そうありたい、きっとそうなるという自己暗示みたいなものだ。
都内に62ある区市町村の首長52人が、雁首並べて小池氏に都知事選挙出馬をお願いした。当然、個人の資格であろうが、見栄えがしない。都知事は都民の直接公選であるのに、あたかも首長が代表しているかのごとき形になる。どこかの古い町内会で市会議員の推薦をするのと似ている。地方自治は民主主義の基本であるが、いまだ首長がこのようなセンスだ。
まあ、これも蓮舫ショックだとみられなくもない。かの首長諸氏は小池氏が自民党と同じ穴のムジナだとして苦戦する危惧をもち、少しでも世論形成の役に立ちたいと考えたにちがいない。
なるほど小池氏はなかなか出馬を表明しないが、このところの選挙戦での不人気を気にして出馬を取りやめるような、ヤワなお人ではない。やがて近い国政選挙をにらんで、国政復帰を狙うのであれば、出馬是非をここまで遅らせるわけはない。はじめから都知事選出馬をする気だが、周囲から押されて立候補したという、古い芝居を演じているだけだ。
実際のところ、業界(同業)関係者からは待望論? が出ているが、都民の関心が高まっていない。かつての小池人気は見られない。誇り高き小池氏が本当に周囲の期待を斟酌するのであれば、サプライズとしては「出馬いたしません」と声明するしかない。
いま小池氏が不人気なのは、緑のタヌキではなく、同じ穴のムジナとして自民党不人気と重なっている。それはご本人がいちばんよく知っているだろう。
加えて、すでに都知事職8年間すごした。決して短くはない。仕事に没頭すると、いわゆる疲れからくる飽きもあろう。本当は、政治家として活躍するために最後の挑戦として、国政復帰したいだろう。その場合、自民党の評判の悪さが、小池氏には追い風になるからだ。ただし、そのためには時期を失った。
策士、策に溺れるに近い。この状態で出馬表明するのは、都民にとってはなんとも三流の芝居を見るようなものである。