論 考

救いがない

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 トランプのような思慮の浅い、かつ品位のない人物に二度と大統領になってほしくない。しかし、バイデンが卓抜しているという気分も起きない。だから、ヘイリーの善戦(わたしはそう思う)が妙に爽快である。

 もし、トランプ再選となれば、ウクライナ支援は続かない。EUとNATOがその穴埋めをするとは思えない。ウクライナ情勢はプーチンにとって好都合になる。一挙解決するというトランプ流ホラ話は信用できない。

 一方、イスラエルに対してトランプはさらに入れ込む可能性が高いから、ネタニヤフのパレスチナに対する強硬姿勢に拍車がかかる。中東情勢はどうなるか全くわからない。火薬庫に付け火することになりはしないか。複雑微妙な国際政治に山師は決定的に有害である。

 バイデン流の権威主義に対する民主主義連合もガタガタになる。もっとも、それは看板であって、バイデン流も一皮むけば権威主義だという解釈もある。

 プーチンに対してバイデン流は白対黒の配置である。トランプになれば、いわば黒対黒で、非常に危ない感じもするが、ひょっとしてオセロゲームのように大団円が訪れるかもしれない。――というのは、まさにSF的展開でしかない。

 衆目の一致するところ、トランプになるとなにが飛び出すかわからない。いまのバイデン流国際政治に不満たらたらでも予想がつくだけましだという事情には、本当に救いがない。これがわれわれの世界である。

 裏金問題で右往左往しているのは、ひょっこりひょうたん島みたい、これまた度外れに救いがない。