論 考

思い出した

 八重洲ブックセンターが開店したのは1978年9月だったそうだ。

 わたしは、東京駅は丸の内南側を使うので八重洲側にはほとんど行かないが、たまたま開店の年に訪れたことがある。なにか購入したが、本棚のどの本だったか記憶にない。

 当時はわれながら寝ても覚めても組合活動で、勉強の蓄積もないのに、新機軸を次々に開拓した。自席で原稿を書いていると周辺の空気が薄くなると言われたくらい、自分でも大驀進していたと思う。

 しかし、感性だけで突っ走ったことを思うと冷っとする。自転車操業なんてものではなかった。綱渡りだったなあ。

 尊敬する上司に「さいきん読書してるか?」と聞かれて、「忙しくて本なんか読めませんよ」と応じた。「あのな、忙しいのは、仕事もする、読書もするからやで」と言われてぐうの音も出なかったのが1965年ごろだ。

 そのとき痛っと感じたのは、いまも忘れていない。しかし、実践開始したのはそれから30年近くもあとだ。なんともはや。