週刊RO通信

自民・国民連立説が示唆するもの

NO.1489

 12月2日に2022年度第二次補正予算が成立した。野党の国民民主党は賛成した。そこへ時事通信が、「国民民主党を連立に加えることを、自民党が検討中」と報道した。玉木氏も岸田氏も全面的に否定したが、なにしろ政界の話である。一筋縄ではいかない。人々にすれば、政治家の発言も、時事通信の報道も、いずれが真実か判断できない。

 時事通信の報道を前提として考えると、火のない所に煙は立たないという観測が起こる。小政党の政治的影響力を大きくするために、玉木氏が日頃腐心しているのは周知の通りである。氏が持論の「対決より解決」路線を政治的行動の原則とするのであれば、連立参加が突飛な話でもない。

 だから、遅かれ早かれ機会があれば連立参加に踏み込むのではないかという観測に通ずる。一方、2019年から20年にかけて、立憲民主党との合流問題では、土壇場で党を割って、玉木氏は、鶏口となるも牛後となるなかれの意気地を見せた。だから、玉木氏支持者とすれば、まさか、そこまで落ちぶれてはいないだろうという発言にもなる。

 深謀遠慮して、少数とはいえ国民民主党が連立参加という形で、ルビコンを渡れば、立憲民主党内部の国民民主党と親和性の高い議員やさらには自民党議員が動き、政界再編の起爆剤になろうとするのか。という見方もなくはないが、ぬくぬくと政権政党気分に浸っている自民党議員が、自民党を変え、政治を変えようと決起する徴候はないから、この説は及びでない。

 むしろ、旧民社党の系譜からみるなら、国民民主党には国粋主義、反左派、親米色が濃厚という面があるから、連立参加ともなれば、国民民主党は寄らば大樹の陰で、やがては解体ということになるしかないだろう。これは、自民党内部の一部や、公明党には不都合である。時事通信にリークしたのが、この連中だという憶測が発生する下地である。

 こんな週刊誌もどきの話はここまで。筆者が主張したいのは、わが日本政治は、自民党の実質独裁的政治状況において、大海を漂うがごとき事情にある。人々が政治的無関心だという雰囲気に悪乗りして、まったく、日和見主義・場当たり的政治をくり返している。実際、議会において、火を噴くような論戦など見たことも聞いたこともない。

 盛んに、わが国を取り巻く安全保障環境が悪化したと吹聴するが、その実、中身はまるでない。そもそも、ロシア・中国・北朝鮮が、わが国を主敵として戦争を仕掛けてくる事情があるのか。国際安全環境を不安定かつ複雑にしているキーマンはアメリカである。ウクライナ戦争も、中国の海洋進出も、北朝鮮の花火打ち上げも、すべてアメリカ外交に焦点が絞られている。

 これについて、わが議会ではまったく論議がない。問題の根本を素通りして、出発的は日米同盟である。つまり、アメリカに対する戦争が始まりそうなので、同盟国たる日本も相応に身構えねばならないというだけである。

 若い人は知らないかもしれないが、こういう事態になるのを極力避けようとして、第二次世界大戦終結と国交回復についての対日講和条約(1951)の際、片面講和ではなく、全面講和をすべきだという世論が立ち上がったし、日米安保条約改定(1960)に際しても、アメリカの戦争に巻き込まれるのはご免だという世論が大きな運動を起こした。先見の明があった次第だ。

 露骨な反日思想を打ち出した旧統一教会のごときと肝胆相照らすような関係を築いてきた岸信介・安倍晋三ラインに議員多数が集まる自民党である。自民党的国粋主義、愛国心なるものが、いかにも怪しいのはすでに傍証されている。それにつけても、日本国の独立独歩論などはまるで見られない。独立日本国なるものの頭上には日米安保が存在する。このような事情を考えるならば、たまたま自民党は多数を形成しているとしても、これでは日本人としての独立自尊、矜持がない。似非愛国主義に任せておけない。

 そこで、典型的な衆愚政治に対して頂門の一針を加えるのは、誇り高き野党の最大の任務である。小たりといえども野党が、真実をきっちり追求する議論を展開すれば、人々の支持はまちがいなく集まる。この件に関しては、解決より対決でなければならない。国民民主党のみではない。野党政治家のみなさんが、いまこそ一大論戦を巻き起こすことを切望する。