論 考

軍事力強化は戦争ゲームへの参加の意思表示

 有識者会議の報告書が出た。もともと有識者の規定が出すべき報告内容を前提して組織されているから、内容に意外性はまったくない。

 いわく、敵基地攻撃能力の保有・増強は不可欠、防衛移転三原則運用指針見直し、能動的サイバー防御、財源は歳出改革と幅広い税目でという4点だ。

 軍事力強化が本当に人々の安全保障につながるのかという議論をおこなってこそ、有識者だと思うが、これでは有識者の看板をつけた官僚仕事に過ぎない。

 そもそも自衛力を超えた軍事力をもつことは、国のあり方を根本的に変える。

 戦争できる軍事力をもつことは、戦争外交ゲームに参加する意思表示である。もちろん、すでに日本の自衛力なる軍事力は世界でも有数の規模であるが、憲法によって戦争放棄を宣言しているから、薄皮一枚でなんとか、戦争外交ゲームに参加しないという立場を維持しているが、これでは、憲法を否定することとまったく同じである。

 さいきんの防衛論議には、そもそも防衛がいかにあるべきかの議論がまったくない。目的・戦略をほったらかして、戦術論議ばかりやっている。

 安倍氏は、ポツダム宣言を読んだことがないと語ったし、菅氏は、戦後生まれだから戦争を知らないと語った。はっきり言って、こんなことをいけしゃあしゃあと語るのは、「政治家ではございません」というのと等しい。

 岸田氏はその後塵を拝して動く、さらに矮小化した官僚政治家である。議論しなければならない大本を考えず、形ばかり作ろうとするのはダメだ。あまりにもお粗末な政治家諸氏が、わが国をどんどん沈没させている。