論 考

トランプ旋風の終焉か?

 中間選挙投票日から4日後の12日、民主党がネバダ州の上院議員議席を確保して、定数100人の半分50人に到達し、票決には議長の副大統領が加わるので過半数を獲得した。

 選挙前予想では、上下院とも共和党有利であったから、物語としては、大番狂わせ、大逆転である。トランプ氏の赤い波が起こらなかった。

 中間選挙は歴史的に、大統領批判、与党の敗北が経験則だが、それを打破した。下院で民主党が後退したとしても、民主党の勝利だ。押せ押せムードだった共和党が敗北を喫したことになる。まさに政治は一寸先は闇だ。

 一貫してメディアの不評を買っていたバイデン氏は、「共和党は、あなた方の父親の時代のそれとは違う。民主主義制度は保証されていない。あなた方が選び取るものだ」という、正しいが陳腐ともいえる言葉の通りになった。

 共和党内部にトランプ批判が公然化している。共和党の選挙戦術が失敗したのは疑いない。バイデン政治の批判に集中するべきところを、トランプ氏がいわば大統領選挙の前哨戦扱いしたので、反トランプを掘り起こした。

 トランプ氏がもっとも嫌われたのは、「選挙に勝てばわたしのおかげ、敗北すればわたしのせいではない」と公言するような、自己中心主義に対してだろう。

 トランプ支持者は、信者もいるが、おおかたはトランプ氏が従来のエスタブリッシュメント政治を変えるという期待だ。ところが、大統領選挙ではないのに、自分の売り込みばかりに精出すのだから、「どうもおかしい」と考えた人が増えたのではなかろうか。

 共和党内部に分裂を持ち込んだのはトランプ氏自身である。客観的には、アメリカの国内的混乱を収束さるためには、共和党がトランプ党ではなく、昔のそれに戻らねばならない。それしかない。

 マッカーシー旋風が吹き荒れた時代があったが、突然しょぼんで消えた。トランプ旋風が同じようになることを期待する。マッカーシーもトランプも、異能のアジテーターであって、有能な政治家ではないのだから。