論 考

本末転倒

 マクロン氏が先月フランスのテレビで、ロシアによってウクライナとその周辺地域が核攻撃されても、フランスが核で反撃する事態に当てはまらないと語ったことが、核抑止力を弱めた発言だとして、失言かと批判されているそうだ。

 EUで核を持っているのは、フランスだけである。フランスはドゴール以来、歴史的にもアメリカのNATOでのリーダーシップを抑制するように努めてきたが、これでは結局アメリカの核に頼ることになるという皮肉もある。

 ところで、プーチンが核を使う場合、核による反撃があるかないかを問題にするだろうか。米NATOとの全面戦争になることを覚悟して核を使うだろうから、マクロン氏の発言が、ロシアに対する弱腰を意味するものではない。

 そもそも、双方が核を使う戦争に突っ込めば、勝敗の帰趨など問題外である。むしろ、プーチンに対して、核兵器を使うことが絶対あってはならぬというサインを送ったとも考えられる。

 もし第3次大戦開始すれば、まったく質量ともに、20世紀に2度あった大戦とは異なる。ウクライナ戦争の長期化で、世論が戦争慣れしたかに見えるが、世界の終わり、地球の終わりと同じ意味である。

 批判する人々のレベルは、まったくそんなことを考えず、ただ戦争当時国の戦略戦術のみの次元にある。戦争のプロ? に任せておけば、世界の未来はない。逆に言えば、ただいま世界中で、政治家でございますと名乗っている人々の本質が問われている。

 マクロン発言の批判よりも、いかにしてウクライナ戦争を停止するか。それをこそ侃々諤々論議してもらいたい。