論 考

から滑り演説

 岸田氏の国連演説(20日)では、ロシアの国連憲章理念と原則を踏みにじる行為を批判し、国連の機能強化を主張した。方向は是である。しかし、こんなことは以前から至極当然の見方であって、それをなぞっても格別変化を引き起こせない。

 問題は、ロシアのウクライナ侵攻を拒否する国、支持する国、中立的見解の3つがほぼ1/3ずつだという事実である。

 日本では、ウクライナ正義、支援する西側正義、ロシア悪で簡単に割り切っているが、ロシアを支持する国の対米批判が非常に強いこと。中立的見解の国は、大国を中心に世界を動かされてはかなわんから、いずれかの陣営に就くのではなく、距離を置いている。これ、中小国の知恵だ。

 逆にいえば、ロシア悪玉論だけで動く国は1/3にとどまる。第二次世界大戦からこの方、ベトナム戦争を筆頭に、アメリカが世界中を攪乱してきたことを忘れてはいない。たまたま今回はロシアがバカな戦争をやっているから対米批判が表面化していないが、アメリカを無条件に支持する国は1/3しかいない。

 国連改革は是だ。しかし、制度をいじくっても、中身が変わらなければ、政治いじり自体が時間稼ぎ論である。

 2/3の国々の共感を得なければダメだ。しかし、岸田演説は通り一遍、聞く前からわかっていることを並べただけだから迫真力がない。

 たとえば、日本がアメリカに対して堂々と適切な批判やアドバイスをするならば、「おや?」と注目を引くだろう。それが全くない。せいぜい中小国援助をちらつかせるだけだ。これでは、新たな展開はできない。

 アメリカが超国連的にふるまってきたことを知らない国はない。

 いま大事なことは、プーチン非難でお茶を濁すのではなく、プーチンの行動を変えさせられるかどうか。追い詰めるだけなら、まさに「なにをしでかすか」わからないところに来ているのではないか。剣呑だ。