論 考

創造的破壊と、その破壊

 ゴルバチョフ氏の告別式は、市民多数が参加した。

 ある人は、「ゴルバチョフはチャンスをくれた。しかし、私たちはチャンスを失ってしまった」と語った。

 ソ連解体を批判する人たちも多いが、スターリンがおこなった官僚的全体主義体制を考えれば、フルシチョフからゴルバチョフへとつないだ旧体制の破壊は、まさしく創造的破壊だ。

 ゴルバチョフがくれたチャンスは創造的破壊である。しかし、新たな体制を構築することは容易ではない。

 プーチンはその創造的破壊を破壊し、官僚的全体主義へ復古させた。それが、「私たちはチャンスを失ってしまった」という意味だろう。だからといって、旧ソ連体制を歓迎する意義はない。

 ロシアは、日本人的なるものとは異なって考える人々の文化が根強くある。完膚なきまでに打ちひしがれた発言ではなかろう。

 惜別の言葉であり、決意を秘めた言葉であるように感じる。