論 考

半端でない米国の内患

 米国で国内半導体支援法案が成立した。バイデン氏は一世一代の大仕事と語った。政府補助金520億ドル・税額控除240億ドル(推定)・向こう10年間に研究促進のために2,000億ドルという大盤振る舞い。

 それぞれの国が、自国経済の興隆のためにさまざまな施策を講ずるのは当然だが、経済安全保障を前面に押し出して経済を武器にする発想は、国際経済の在り方にとって上等ではない。

 米国内では、依然として格差問題が深刻である。バイデン民主党にすれば、大手柄で中間選挙の劣勢をなんとかしたいのだが、トランプが強烈に批判したラストベルトをはじめとする問題には有効打にならない。

 FBIが、トランプ邸マール・アラーゴの家宅捜査をおこなった。大統領辞任に際して、持ち出し厳禁の書類を多数持ち出した疑惑だ。また、トランプ企業の怪しいビジネスが一貫して問題視されていることもあり、客観的には、捜査が進むのは妥当な方向だが、議事堂襲撃問題も含めて、司法が起訴に踏み切るかどうかは目下混沌中だ。

 共和党はますますトランプ党化しており、起訴が現実化した場合に、米国内にどんな不祥事が発生するか。安易には読めない。

 20世紀後半に、米国内では、近い将来格差問題を軸とした大暴動が発生する恐れありという主張があった。はっきりしているのは、トランプを巡る事態は、それに輪をかけた事態を生み出しつつある。目が離せない。