論 考

万人敵対説の米国

 米国連邦最高裁が、「自宅外で銃を携帯するには、その必要性があることを証明する許可を必要とする」という1913年のニューヨーク州法律を、6対3で無効とした。

 憲法修正第2条に基づいて、「国民には、公共の場で銃を携帯する基本的権利がある」と判断した。

 最高裁は、共和党支持の裁判官が6人で、共和党は銃規制に全面的に反対しているが、それを連邦最高裁が是としたことは、大きな衝撃である。

 共和党と民主党の対立は議会内だけではなく、国民間に断絶分断を固めている。11月の中間選挙でのバイデン民主党の劣勢は変わらず、米国的民主主義にまたまた暗雲がかぶさった。

 トランプが米国民の断絶分断を進めたのは周知の事実だが、トランプの扇動する力が卓抜しているにしても、事態は極度に深刻だ。

 T・ホッブス(1588~1679)が、自然状態では人間は万人が万人に対する闘いの状態にあるから、相互の契約によって主権者としての国家をつくり、万人がこれに従うことによって、平和が確立されると説いたのは17世紀である。まるで、いまのアメリカは400年前をさすらっているようだ。

 単純にいえば、アメリカは国として崩壊しつつある。そうでなくても世界は理不尽な暴力的政治が続いている。

 世界秩序の崩壊を懸念する。