論 考

杉並的奇跡! 再現

 有権者47万人の杉並区・区長選挙で、4月に立候補表明した岸本聡子さんが76,743票を獲得、次点の現職区長を187票の僅差をつけて当選した。政治参加意識、民主主義意識が浸透している杉並らしい物語が展開されたようだ。

 岸本さんは当選の弁で、情報の共有とみんなで話し合う姿勢を語った。いわゆる政治家が本気で語らず、本気でやらないことをズバリ打ち出した。

 選挙運動は女性が多数参加し、各自ができる活動を展開した。みごとに1人ひとりの活動を運動に組み立てられた。市民参加型のお手本になる。

 このように書くと格別新しいことがないように思われるかもしれないが、「チーム力=Σ個人力」の公式を堅実に追求した。

 市民参加とか、民主主義とは、個人がΣ個人力の価値に気づいたときに爆発的な力を発揮する。選挙の現場を見る機会がなかったが、かつて、われわれもなんどか体験したこととイメージが重なる。

 原水禁運動の歴史で、1954年の「杉並アピール」が有名だ。全国各地で始まった原水禁署名運動をバラバラのままにするのでなく、全国民の運動に統合しようという提言だった。

 「特定党派の運動ではなく、あらゆる立場の人々を結ぼう」という提唱は地味だがまさしく運動の公式を打ち出した。杉並区では全区民31万人中27万人が1カ月間で署名した。

 全国の署名は、翌1955年8月に3,238万人を超え、世界的に共感を集め、世界では、7億近い署名が実現した。原水禁世界大会が始まり、1957年のパグウォッシュ会議につながった。バートランド・ラッセル、アインシュタイン、湯川秀樹氏らが、人類絶滅の危機を訴えた。

 杉並アピールから68年、――運動とはなにか――を踏まえた活動が展開されるとき奇跡! が起こると思う。