論 考

アメリカ国内が危ない

 バイデン外交の派手さに拍手を送る向きも多かろう。ウクライナ戦争を背景に、世界が民主主義陣営に結集しつつあるという見方である。

 一時期、マクロン氏が「もはや死んだ」とまで批判したNATOが、劇的に結束を固めて、いまや欧州の政治地図を塗り替えつつあるというわけだ。

 IPEFという、貿易ネットワーク(?)は、常識的には中身不明のきわめてあやふやな提案だが、それでも13か国が加入するようだ。

 ところがアメリカ国内は、トランプを信奉する共和党が勢いづき、黒人差別を押し出して銃を乱射する。中間選挙は、バイデン民主党の敗北必至という予測である。

 世界の民主主義の盟主どころか、アメリカ国内は分断され、不信と不安が覆っている。アメリカ国内を注視するかぎりとても民主主義大国とはいえない。

 バイデン氏に忠告したい。民主主義とは基本的人権が根っこである。基本的人権は国境を越える概念である。つまりは、平和主義とコインの裏表である。民主主義を掲げつつ、世界を分断する戦略は、基本的にまちがいである。

 一見、民主主義を掲げる側が世界世論を牽引しつつあるように見えるが、バイデン民主党が中間選挙に敗北し、次の大統領選でトランプ復活というような事態になれば、目下の米国式世界戦略は足許から崩れる。

 武力で世界平和を維持する考えは、国内で幅を利かせる嘘と暴力の温床だということを、じっくりお考えいただきたい。