週刊RO通信

信頼失った日銀、日本経済はガタガタ

NO.1460

 2期目も終わりに近い日本銀行の黒田総裁の任期は、2023年4月である。アベノミクスと調子を合わせてお祭りの馬鹿囃しよろしく、派手に登場したが、いまや土俵際で体勢が崩れて立ち直り不可能になった相撲取り並みである。黒田日銀の政策は、羊頭狗肉の典型であった。

 黒田氏個人の栄枯盛衰はどうでもよい。いや、もちろんよくはないが、ホラとハッタリの責任を取れと迫っても、取らせようがない。インチキなアベノミクスの安倍氏が、いまだ日銀子会社論、打ち出の小槌論を騙っているのと同様、いわゆる遣り得、やったことの始末をつけさせられない。

 2013年4月黒田氏は、「マネタリーベースを2年で2倍、インフレ率2%にする」とぶち上げた。マネタリーベースは、市中流通する現金と民間金融機関の中央銀行預け金との合計である。2012年に132兆円だったが、現在は662兆円、5倍になっている。

 マネタリーベースは民間金融機関の信用創造のベースであり、その何倍もの通貨供給量を生み出すはずであるが、マネタリーベースが5倍になっても日本経済はほとんど成長しない。やぶ医者の見立て違いに加えて、投薬も失敗したというわけだ。

 当時は、経済成長戦略として、財政出動・金融緩和・成長政策の3本立てを主張し、デフレ不況だから、金融じゃぶじゃぶでデフレをやっつけるというリフレ派が幅を利かせていた。ところがおカネは潤沢にあった。民間企業金融資産は791兆円、現金預金215兆円である。企業が利益を溜めることに熱心で、新規需要を増やすための設備投資をやらない。

 概観すれば、1990年代にバブル崩壊し、2008年に米国発金融危機に見舞われる流れにおいて、日本企業はすっかり利益中心主義となって、企業活動を活発にする気迫を欠いていた。

 素直に考えれば、デフレだから不況だというのはおかしい。不況だからデフレなのである。原因と結果を取り違えるような連中が、アベノミクスを喧伝便乗した。本来、各企業は成長戦略に基づいて積極果敢に挑戦するべきなのに、お国の財政出動、金融緩和に依存する。

 金融ジャブジャブのおかげで、株価はそこそこ、円安が進んだ。いまだ、アベノミクスはよかったと語る諸氏は、株価と円安効果に注目するわけだが、株価とて勢いがあるわけでなく、円安で儲けたといってもごく一部の大企業のみである。アベノミクスによって、経済はまったく成長していない。

 デフレの原因を考えれば、1990年代からなにがなんでも人件費削減であった。労働組合役員が経営者以上に「会社思い」である。働く人々は、とにかくわが身の雇用が大心配である。きわめて目先のわが社の経営事情に安堵して、上を見ればきりがない・下を見てもきりがないという典型的現状固着意識にはまっている。

 政府が、ピント外れの働き方改革を打ち出したが、労働組合(員)の反応はきわめて弱かった。働き方というなら、働く人々が率先垂範して物申すのが当然だが、まったく、そのような動きは見られない。意識のほとんどを会社生活に左右されている人々が、どっぷり沈滞ムードにあってガンガン消費をするなんてことはあり得ない。

 いまや、日本全体の購買力は、50年前の水準である。円安とウクライナ問題で石油・ガスなど資源エネルギー、穀物価格が上昇し、人々は物価値上がりに悲鳴を上げつつある。この時点で、黒田公約のインフレ2%が実現しても、経済成長に貢献するわけがない。

 米国FRBは国内超高物価対策で、どんどん金融引き締め、量的緩和を推進する。当然ながら日米金利差は拡大する。1ドル130円で収まれば幸いだが、加速度的に円安が深化する懸念がある。日銀は、見事な債務超過であるから、円安・インフレの昂進には打つ手がない。

 「中央銀行の膨大な通貨供給の帰結は、歴史の教えに従えば、制御不能のインフレになる」。マネーは退蔵されて動かない。政治家は財政再建の見識などほとんど持ち合わせていない。国民生活破綻の道へさ迷いこんだのではなかろうか。政府与党の経済政策は絵に描いたような失政だ。