いまの世界情勢から見えるのは、民主主義の脆弱性とナショナリズムの危険性だ。前者は、人間の尊厳、つまり個人の価値を最大尊重する。後者は、その正反対で、国家の価値を尊重するのは看板で、実は、権力を掌握した人間が、国家の大義を掲げて、自分の趣味を展開する。
人間の尊厳を大切にする社会で、目立った成果を上げるのは容易ではない。一方、権力政治は、よくも悪くも存在感を際立たたせる。
存在感と、存在理由はまったく異なる。存在理由を確立しないと、権力者が目立つためだけの典型的ポピュリズムである。
ポピュリズムの権力者として立つためには、人々の言論を統制し、同意しない人を弾圧する。プーチンが展開しているのがこれだ。
いずれ(可能な限り早くなってほしいが)、プーチンの時代は終わる。プーチン中心主義の権力機構は綻びる。そして、ロシアが変わる。
ウクライナの人々は命の危険と膨大な破壊に直面しているが、ロシアの人々は、真綿で首を絞めるような、長い苦い生活に直面することになろう。
民主主義国は、半端な軍拡論議に熱を上げるのではなく、脆弱な民主主義をしっかりさせる努力をしなければならない。
なぜなら、ナショナリズムこそが、戦争の核心だからである。