論 考

国連を舞台に事態収拾を

 やってしまった! ロシアの栄光を求めて欧州の安全保障環境について、欧米を引っぱり出そうとする戦略は、それなりに理解できるとしても、実力行使に出れば世界の良識の了解は得られない。

 プーチン氏の軍事外交戦略家としての評価は吹っ飛んだ。プーチン氏は自分の世界観・歴史観を、自分自身で破壊した。つまりは、理屈をこねても、矮小な人物が権力と武力を握って舞い上がり、自分が描いた戦略からはみ出して未知の領域へ突っ込んだからだ。

 バイデン氏が主張するように、これから発生するすべての事態はプーチン氏の責任に帰する。逆にいえば、軍事優位であればなんでもやれるというヤクザの論理に対して、欧米のみならず各国が、問題の対処をしなければならない。

 言語道断である、断乎抗議するという姿勢を、具体的に対処策として形成するしかない。

 ロシアが軍事的にウクライナを制圧しても、ウクライナの人々の気持ちは完全にロシアとの一体性を失った。領土と人の心は別であるから、ロシアの勝利はあり得ない。

 軍事力に対して各種制裁をおこなっても、それだけでは戦争拡大と等しい。

 たとえば、中国はロシアの行動に失望感を表明した。中ロを一緒くたにするような愚をせず、まず、ロシア軍の戦闘停止、撤退を求めるための取り組みを国連ベースでおこなうべきだ。

 ロシアが拒否権をもっているといっても、今回は、ロシアが当事者であるから、国連での論議をさせないという態度に出るなら、すでに国連憲章に違反しているのだから、国連から退場してもらわねばならない。

 米国に世界秩序の維持を実質的に委ねてきた、世界各国の知的・道徳的堕落を、この際、きっちり反省するべきだ。

 ロシアの無法は、それを突いたのである。プーチン氏がヤクザであろうとも、それと同じ程度で対応するのであれば、それこそ、本当に世界が歴史的後退の道へ沈没することと等しい。