論 考

プーチン氏が突き付けた痛烈な皮肉

 プーチン演説で、「ウクライナはボリシェビキが作った国だ。レーニンが作った」と語った。

 たとえば、オデッサ市民と戦艦ポチョムキンの兵士たちのロシア革命におけるエピソードは感動的である。ところが、今回のプーチン氏の行動は、レーニンの顔に泥を塗るようなものだ。

 これは、時代錯誤の国家主義者で、無理無体がまかり通ったツァーリ時代と同じである。レーニンを引っぱり出すべきではない。

 第二次世界大戦以後、ソ連が国連の常任理事国であり、ソ連解体後もロシアが常任理事国である。ロシア国益(厳密にいえばプーチン氏の権力維持だろう)のみで行動するのであれば、常任理事国の資格はない。

 本日の朝日は、「米国の指導力が減退し、ロシアや中国がそれぞれに強権姿勢を強める無極化世界が到来した、ともいわれる」と、社説に書いた。

 実のところ、米国の「指導力」なるものが全盛の時代に、米国が好き放題やってきたことを忘れていなければ、こんな能天気は書けない。

 力による秩序には正義はない。米国の力にべったり追従している日本の無様な姿を認識していれば、こんな表現をするべきではない。

 世界平和や秩序は、ロシアや中国を悪漢にして片付けられる問題ではない。あえていえば、プーチン氏は、民主主義を唱えて適当なことばかりやっている陣営に対して、痛烈な皮肉をぶっ飛ばしたのである。