論 考

若者・歴史・政治

 ドイツでは12月8日に、メルケル後、社民党ショルツ首相が率いる3党連立内閣が発足した。総選挙後には、連立工作が遅滞して、半年くらいかかり、最悪の場合は再度総選挙もありうる。こんな予想も出ていたので、それを思えば極めて速やかに新内閣が発足したといえる。

 ショルツ氏は地味な人柄で、派手な発言がないが、堅実に考える人々の支持がショルツ氏を押し上げた。

 もう1つの特徴は、連立パートナーの緑の党の躍進である。その推進力は若者だ。18歳から29歳では支持率22%で他党を圧倒している。10代の投票率は70%もある。若者の関心は、気候変動、右翼ポピュリズムへの反発、反権威主義にある。

 緑の党は1980年の結党である。ルーツをたどると、60年代のベトナム反戦運動、70年代のローマクラブ報告「成長の限界」へ共鳴した若者たちの、人間解放への意志が脈々と伝えられてきた。

 さらに辿れば、ナチズムに血迷った時代の徹底的な反省と自戒が、一貫してドイツの政治思想の底流にあるようだ。

 政治は、1人ひとりのライフスタイルと切り離せないという信念を、ドイツ人が共有しているとする見方も優勢である。

 日本でも70年代辺りまでは、戦争の歴史的教訓を踏まえ、民主主義や反戦運動を推進する若者が少なくなかったし、社会全体にその気風が共有されていた。組合で青年運動が衰退したのは、80年前後からであった。