月刊ライフビジョン | 社労士の目から

運河の街の気になる木

石山 浩一

 有楽町線辰巳駅を降りて西出口から地上に出るとソフトボールができるほどの広さの子供公園があります。駅の出口の左手にはキャナルを跨ぐたつみ桜橋があり、橋を渡ったところには高層マンションが並んでいます。

 そして駅のほぼ正面は毎朝高齢者がラジオ体操を行っている広場で、その広場には4本のメタセコイア(和名アケボノスギ・曙杉)があります。昭和62年歌会始に昭和天皇がメタセコイアを謳われた歌があります。

 わが国のたちなほり来し年々にあけぼのすぎの木はのびにけり

 このメタセコイアは毎朝体操している人や通勤者を見守るように立っているのですが、最初のころは「あまり見たことのない木だなー」程度で気になりませんでした。それが今月末の急激な冷え込みで紅葉してきたのです。毎日のように見ているメタセコイアですが初冬の、紅葉している姿はひときわ目を引きました。

 メタセコイアは1941年に三木茂博士(1901-74)によって化石をもとに新属として設立されたというヒノキ科の落葉樹です。原産地は中国湖北省で山村の神木とされ生きた化石と言われているようです。葉っぱが羽状複葉で柔らかく、細い小枝に対生しています。落葉樹は葉が色づくことによって紅葉となりますが、メタセコイアは木全体が色づくように見えるのです。紅葉しているこの時季は葉っぱにチョット触れただけで、モザイクのようにばらばらになり壊れてしまいます。木は30メートルほど伸び建物の8階程度の高さになるため、街路樹として植樹されているところが多いようです。

 私の住んでいるマンションの広場にも10本あり、メタセコイア広場と呼ばれています。ただし、マンションによるビル風の通り道のせいか、駅前に比べて貧弱で風情はあまり感じません。高さは6~7階程ありますが、痩せているようで木全体にふくらみがありません。それでも高さがあるため現在はクリスマスのイルミネーションが点灯して存在を示しています。

 コロナによって日常生活の変更を余儀なくされた2年有余でした。新しい年がコロナを克服して大空に伸びゆくメタセコイアのように、明るい年になることを願って止みません。

2021年12月28日 記


石山浩一 特定社会保険労務士。ライフビジョン学会代表。20年間に及ぶ労働組合専従の経験を生かし、経営者と従業員の橋渡しを目指す。  http://wwwc.dcns.ne.jp/~stone3/