論 考

大名行列

 今朝は急に寒くなって、驚いた。快晴で気分がよい。明日が衆議院議員選挙の公示だが、選挙運動には最適な時期である。選挙は、なにしろ熱くなる。夏の選挙は暑苦しい。2月の選挙の体験がある。カッカするから、ちょうどよかった。

 岸田氏の日程を見ると、大変過密に視察活動をしている。政府のトップだから、現場で視察し、当事者の話を聞くのは意義がある。もちろん、選挙向けパフォーマンスが第一の狙いである。そこで、一言添えたくなる。

 会社でもそうだが、トップが現場へ出ることは昔からおおいに推奨されている。その場合の注意事項は、大名行列は効果が薄い。まして、首相は、取り巻き多数、カメラの放列付きだから、現場の人は、よほど肝が据わっていても、本当に言いたいことは言わない(言えない)。

 もちろん岸田氏の場合、注目を集めるのが第一だから、真実を知るための行脚ではない。人の意見を聞くというのは形ではないことを念頭においてほしい。

 日本人は、黄門的行脚が好きだが、現実離れしている。権力者に直接お願いして、問題解決を図るのは、宝くじに当たるようなものだ。

 首相職に求められるのは、日常的に現場の切実な声が行政機構を通じて、きちんと処理されることであって、トップの威光を輝かせることではない。

 組織のトップは、機構がそれぞれの役割をきちんと果たすように、組織文化を構築するのが本当の仕事である。

 本気で現場を見て、人の意見が聞きたければ、こそっと、1人で行くべし。