論 考

ポンチ絵の安全保障

 豪英米が新たに構築した安全保障の枠組みAUKUSが、あちこちに波紋を広げている。

 米英のみが共有している原潜技術を豪に供与する。2016年に豪が仏から購入する予定だった潜水艦12隻の契約がチャラになり、「儲け話」が吹き飛んだ仏はカンカンだ。EUも批判している。

 中国は力の均衡が変わるとして、古い発想だと批判。AUKUSの狙いが中国包囲にあるのは誰にでもわかる。

 今度は北朝鮮が、核開発競争を招きかねないと批判した。

 バイデン政権にすれば、同盟関係路線復帰を期待されていたが、アフガニスタン問題で批判を食らった。今度は同盟関係強化であるとして打ち出したものが、またまた叩かれるのだから得点稼ぎにならない。

 米の匙加減1つで、安全保障の枠組みがいろいろ変化すること自体が問題だ。しかも、安全保障と看板を掲げつつ、実のところは各国とも、軍事技術商売に余念がないのだから、程度が悪い。

 軍事で相手を抑え込むという反知性的思想を反転させないかぎり、世界は平和になるどころか、ますます不安定になる。