論 考

見えない行方の出口戦略?

 政府は、医療逼迫度をより重視して、緊急事態宣言の解除基準を再検討するという。先手先手で対策を検討すること自体は悪くはない。

 しかし、入院・宿泊医療が思うに任せず、自宅療養で亡くなる人が報道され、医療機関が大混乱している時点で、なおさら混乱に拍車をかけるのではないか。

 たとえば、感染爆発と定義してきたステージ4(10万人当り感染者)の25人を、かりにもっと大きな数字に上げるならば、誰が考えても、状況が不都合だから、不都合を不都合ではないと置き換えるだけだ。とどのつまりは、頼みの綱としてきた自粛が無意味な方向へ加速するだろう。

 悪しき官僚答弁――現実を無視して、こうありたいという願望を前面に押し出し、人々の不安や懐疑を肩透かしする――テクニックに見える。

 いま、累積感染者数は全国平均で、100人当り約1人、東京は約2人である。感染数は気にしないでいいというのは、医療体制がしっかりしている場合である。いまは、そうでないから、自粛で注意を呼び掛けているはずだ。

 ワクチン接種効果に確たる安心が見て取れない現状で、政府は、手がつけられないアンポンタンに見える。コロナウイルスではない、格別のウイルスにオツムが感染しているのではないか。