論 考

不動の判断基準!

 いわゆる「黒い雨」裁判について、菅氏が上告しないと表明した。原告84人の背後には雨を浴びた人が約1.3万人おられるようだ。

 政府内では上告すべしという意見が大勢だった。とくに厚労省幹部は、判決は飲めないという強い見解を打ち出していた。

 だから、広島県知事らの「政治判断に感謝する」という気持ちがわからなくはないが、手放しで共鳴できない。

 官邸周辺は、「科学」ではなく、「福祉的措置」だと解説(?)した。これは正しくない。それをいうなら、「財布」ではなく「政局的対処」というべきだ。

 そもそもは、財布が科学を凌駕していたのである。古くは明治の足尾鉱毒事件から始まり、水俣病にせよ、数多あった公害の対策・補償に対して、つねに財布が科学を捻じ曲げてきた。

 今回の影の功労者はコロナ騒動である。菅的コロナ対策は、従来自民党を支持してきた人々にも、じわりと自民離反の動きがある。菅氏もようやく、このままでは危ないと気づいたらしい。

 「政局的対処」とは、もちろん総選挙での党勢確保の問題である。連中の判断基準は、どこまで行っても選挙の優勢・劣勢の判断でしかない。これは、科学も財布も乗り越えた政治力を持つのである。