論 考

ふんだんな謙虚さを

 アメリカは現在、株価が100年ぶりの高水準で、市場は沸いている。一方、国家債務が14兆ドル・GDPの67%に達している。そこで、経済の慢心を諫め、今後の経済運営に警鐘を鳴らす動きもある。

 元財務長官ルービン、ノーベル賞経済学者スティグリッツ、元行政管理予算局長オルザグの3氏が、アスペン研究所の研究会で、エコノミストに対しては「ふんだんな謙虚さ」を、政策立案者に対しては、財政プロセスを全面的に見直して、たとえばエコノミストの予想が外れた場合には、一部の財政プロセスを自動時に調整できるような仕組みを考えるべきだと主張した。

 AIで首位を走ってきたが、欧州はロボットやAIでギャップを着々埋めつつある。アメリカは対中国戦略がすべてのような動きをしているが、米中ともに巨大な対外債務を抱えており、不測の事態が発生したら的確な対応ができないではないかという、極めて常識的な考え方にも見える。

 経済学者は、本当のところ、未来予測は不可能なんだという、極めて謙虚な心構えに立っている。

 日本においては、世界一の巨大債務を抱えているにもかかわらず、この数年、債務問題・財政問題にかんする関心は低く、議論すらほとんどおこなわれてない。黒川日銀はおそらくやりっぱなしで、ハイ、サヨウナラになろう。

 安倍氏は、昨日苫小牧で一席ぶったようだ。いわく「自民党に逆風が吹いている。謙虚にやらねばいけない」云々。逆風を作った元凶が自分だという認識がまったくない。反省だけならサルでもできるが、この人に至っては「わが辞書に反省という言葉はない」らしい。謙虚という言葉の理解も、要するに「うまく乗り切ろう」という解釈に違いない。

 国をどんどん危なくしているなど一顧だにしない愛国者。ライトにしてブレーンレスの人は幸いなるかな。