論 考

委縮から元気への道筋

 毎日コロナ感染データを眺めている。今月に入ってからの、直近1週間の10万人当たり感染者数が10人を超える都道府県が34~40で、だいたい38前後に集中している。毎日、感染者ゼロの都道府県が、ほとんどない。

 つまり、宣言や重点措置が出されていない地域でも、全国的に感染拡大の勢いが止まらない。ワクチン接種が開始したが、昨年から感染拡大防止対策は自粛に止めを刺す。1人ひとりにすれば、とにかく慎重にやるしかないわけで、必然的に行動が委縮する。直観にすぎないが、日々、ジョギングやマラソンをしている人も少なくなったようだ。

 元都知事の猪瀬氏が、2010年代に元気がない日本的状況から、選手が作り出すドラマを感じて元気回復し、明るい夢をもってもらいたくて、東京五輪獲得に邁進したと語っている。ロマンチックだ。

 映画のエンディングでいえば、屍累々の戦場場面で、打ちのめされた気分になっていると、画面がパンして、煌々たる月光が映し出される。慰められた心地がして映画館を後にするというテクニックである。

 優れた芸術作品は、たしかに人の心に働きかける力が強いが、作品によってひととき元気回復しても、長続きしないのが残念だ。元気は、1人ひとりが生み出して培養するものである。