論 考

上意下達では効果がない

 アメリカの医療従事者3600人以上が、この1年、コロナで落命したというデータが公開された。英紙ガーディアンとカイザー・ヘルス・ニュース(KHN)による。

 医療従事者の感染は一般人の3倍、看護師・同助手、介護従事者などがほとんどで、70%が非白人の低賃金労働者である。個人防護具(PPE)が行き渡らない、感染者検査・感染者追跡調査が不十分だという指摘もある。

 過酷でリスクの高い仕事をしている方々をエッセンシャルワーカーと奉るだけではなんともならない。しかも、非白人や低賃金で働く人ほど厳しい。

 コロナに限らない。不都合な事態が発生した場合、社会的・経済的に弱い立場の人にもっとも負担がかかる。まして、差別意識が浸透していればなおさらだ。

 ところで、わが国でも感染者検査や追跡調査が手薄である。そこから得られた知見は、飲食店に集中して発揮!されているが、もっとみんなに有益な報告はできないのか。政治的対策を大声疾呼しても効果が薄いのは先刻承知である。

 行政当局が自粛をお願いするから、他人事で、自粛疲れも出る。各人が主体的・自発的な構えて行動するのが理想的だ。政府や自治体に集まっている知見を洗いざらい提示するという、公開原則を貫いてもらいたい。

 上意下達では仕方がない。有権者は菅氏の仏頂面を見ても忖度しない。みんなが気持ちよく取り組むために、行政当局はもっと知恵を絞れないものか。一度、学術会議のみなさんにもご意見拝聴してはいかがだろうか。