論 考

日本の消極的外交

 日米2+2で、中国を名指しで牽制したが、それで中国が対応を変えるというものではない。日本政府は、もともと日米同盟を金科玉条として、憲法による平和戦略を顧慮していないことも加えて、中国からすれば想定内である。

 すでに中国は世界最大の海軍を建設した。世界において、米中の軍事力が突出しているが、米中直接軍事衝突は、「常識的」には考えられない。

 日本政府が、中国を名指しで牽制したことは、米国と完全に歩調を合わせるのであるから、ならば、日本が米中対立軟化のための橋渡しをするという視点が消えた。もちろん、そんなことは建前に過ぎなかったとしても、理屈では、その選択肢を捨てる方向である。

 外交というものは、選択肢が多いほど好都合である。また、だからこそ外交の醍醐味があるわけだが、日本的外交は自縄自縛路線を辿っている。

 E・H・カー(1892~1982)は、国力=外交力は、経済力・軍事力・世論形成力であるとした。強大国が世界の自然法を形成するとすれば、強大国間の合意形成こそが世界の安定を構築する方途である。

 大局的、かつ中長期的に考えた場合、日米同盟力強化一直線という日本的外交方針は、あまり上等とはいえない。