論 考

力の政治について考えたい

 先日日本政府は、香港の選挙制度改変に関して「看過できない」と声明したが、昨日、在日中国大使館は、「内政干渉である、断然不満だ、(日本政府の見解に)断固反対だ」と見解を発表した。日中双方が言いっぱなしである。

 本日の朝日社説は「香港の選挙 理不尽な改変だ」として、香港民主勢力の苦境を他人事とせず、自らのこととして受け止め、民主主義を守る重みを噛みしめたいと結論した。

 民主主義の日本政府が、香港事情を看過できないというのは建前上その通りであるが、では、どうするのかと考えると、4月の日米首脳会議で、反中包囲網を強化する方針へさらに傾斜するのではないか。中国にすれば、だから国家主権を守らねばならないのだという文脈になろう。

 中国の香港に対する思いは、1840年アヘン戦争から続く中国(人)の臥薪嘗胆事情を考えると、日本が、中国の国家制度でない民主主義を拠り所にするだけでは到底論破できない。朝日社説も、それを理解するからこそ、他人事とせず、民主主義の重みを噛みしめようというのだろう。

 ところで、わが民主主義を謳歌している人がいったいどのくらいいるだろうかと考えると、まことに心許ない。

 民主主義勢力なる国々が、そうでない国々の人々から羨望の目で見られるようになれば、国家権力がゴリ押しするような事態は改善されるだろう。もう1つは、中国(人)が辿った長い苦難の歴史を、他国はじっくり考えてみなければならない。この2つは、いまのところはるかなる道のりである。

 政治は最高の道徳である。この言葉を本当に実践する政治家や国民が増えなければ、いつまでたっても、世界は野蛮な思想が消えない。