論 考

日本政治の危うさ

 今朝の毎日社説は、「官邸の機能不全が心配だ」と書いた。然り、対コロナウイルスについて戦争の例える発言がしばしば登場した割には、為政者の危機感らしきものを感じにくい。

 2日の朝日新聞に、福島第一原発事故の際、国会事故調査委員会を率いた黒川清氏のインタビューが掲載されているが、これは、どなたさまもお読みになったほうがよろしい。同委員会報告書は、2012年7月に公表された。きっばりと「原発事故は人災」であると結論した。当時、不可抗力か否かが論じられたが、地震・津波は不可抗力であっても、科学技術に限らず、人間の営みの責任はすべて人間に帰着する。これこそ「哲学」である。

 しかし、東京五輪招致に際して、安倍氏はIOC会議で事故処理が「アンダーコントロール」にあるとスピーチした。100歩譲っても言い過ぎである。そこには、委員会報告の「人災」論の重みが全く分かっていない。

 その悪しき惰性的思考が今回のコロナ対策を妨害しているのは疑いがない。反省だけならサルでもできるが、反省ができていないから、また、同じ失敗を繰り返す。官邸の機能不全という意味は、毎日社説が指摘した以上に根深い。