論 考

「ビルマのひとごと」ではない

 ミャンマーの「22222」運動は、全土に広がり100万人以上参加したらしい。ゼネストの呼びかけに応じてたくさんの商店が店を閉めた。

 人々が言葉で、暴力に掣肘を加えている。

 日本が敗戦した直後、パール・バック(1892~1973)が、日本人に忠告してくれた言葉を想起した。いわく――

 「民衆が自由で独立的で自治的である国は、いかなる国でも常に善なる人々と悪なる人々との間に闘争がおこなわれる。もし、この闘争が存在しないならば、それは暴君が支配して、善き人々が力を失っていることを意味する」

 わが国会では、上級官僚が「利害関係者と思わず」「利益誘導なし」などと、誰も信用しない言葉を繰り出している。人々が、馴れて麻痺しているにせよ、前内閣から言葉の信頼感を貶める事態が続いていて、改善の傾向が見えない。このような事態が悪化すると、暴力が蠢く危険性をはらんでいる。

 政治家や官僚、財界人など、現実に社会のリーダー的位置を占めている人々は、常に言葉が尊重される社会を念頭におかねばならない。言葉が尊重されない社会は内部から腐るのみである。