論 考

人材払底の自民党

 安倍氏と秘書が口裏を合わせて、安倍氏は知らなかった、秘書は隠していたと言い通せば、具体的関与の証拠を押さえられない以上、検察としては安倍氏を起訴できない。理屈ではその通りである。

 安倍氏は天下の政治家であるから、秘書を信頼しきって、たかが! 後援会の運営は秘書に任せて、一切自分は口出ししないということがあり得ないとは言えない。これまた理屈である。

 さて、しかし、秘書の不祥事が露見した場合、徹底的に信頼しきっていたのであれば安倍氏と秘書はいわば一心同体であるから、道義的責任を免れない。

 また、秘書に欺かれていたとしても、議会における答弁は、世間に対してきっちり嘘をついていたのだから、この責任は免れない。

 本当に安倍氏と秘書の関係が前述の如くであったとして、事態が露見した以上、安倍氏は国会で、国民対して一連の事態について正しい答弁をするのが筋道である。これは、自民党もそのように態度決定するべきであって、この期に及んで、堂々と質疑の機会を持たないのであれば、実は、安倍氏と秘書の関係が口裏併せていたことを問わず語りに語ることになる。

 それにしても、在任記録の長い首相が、この程度であったという事実——まさに大自民党におかれては、人材払底しているみたいである。