論 考

褌と敢闘精神

 対COVID-19において、「褌(フンドシ)を締め直す」という、やや古風な言葉が登場した。「褌を締めてかかる」というのが元々の使い方で、固く決心して覚悟して事に当たるという意味だ。

 相撲では「ゆるふん」という言葉がある。回し(力士の褌)をきつく締めていて、組打ち得意の相手力士に回しを握られると、身動き取れなくなるので、わざと回しを緩めにつける。これ転じて、気が緩んでいる意味になる。

 行政当局は、警戒レベルを上げるというが、それを裏付ける手立てはない。「気をつけなきゃいけませんよ」から「ぼやぼやするな、危ない!」という表現に代わっただけである。個人としては命が惜しければ、さらなる自助努力をするしかない。

 たまたま日中戦争の始めに動員された人の「従軍日記」を整理しているが、驚くべし、兵士の食糧すらきちんと用意されていない。

 どうしたのか? 「徴発」という方法で日々の食べ物を得る。現地の中国人から対価と交換に必要な品を入手することになっているが、実際は、疎開して逃げた家宅から黙ってもらってきたり、恫喝して頂戴するのであって、世間ではこれを窃盗・強盗という。

 戦闘は人間が活動するのだから、武器弾薬だけではなく、衣食住のための食糧・物資が兵士に届けられなければならないが、それが呆れるほどできていなかった。Logistics(ロジスティクス・兵站)がなってない。

 「対COVID-19戦」においても、五輪・パラ輪は観客入れてやるぞ、GoToキャンペーンは見直さないぞと意気軒高であるが、それを達成するのは、「総員褌を締めて敢闘せよ!」という次第だ。

 旧日本軍の精神主義は相変わらず現在である。