論 考

今度は蜃気楼

 先回の大統領選では、Glass ceiling(ガラスの天井)が話題になった。女性初の大統領をめざしたヒラリー氏は、人々の好感度の壁に阻まれて、まさかの敗退をした。

 今回は投票を間近に控えて、Red mirage(赤い蜃気楼)なる言葉が登場した。いわく、郵便投票の開票作業が遅れるので、結果を無視してトランプ氏が早々勝利宣言をする(のではないか)。

 有権者2.4億人、期日前投票はすでに6千万人を超えており、そのうち4千万人以上が郵便投票している。郵便投票は民主党支持者に多いから、着々とバイデン氏が追いあげて逆転勝利する。

 そうなればトランプ氏の勝利宣言は蜃気楼である。共和党のカラーが赤なので、赤い蜃気楼というわけだ。

 いずれにしてもスカッと決着するか? 投票日まで1週間を切った。人々が「Heigh-ho」(やれやれ)終わったという時は、目下予測がつかない。

 トクヴィル(1805~1859)が、大統領選挙の熱狂ぶりを見て、選挙自体がアメリカのデモクラシーの危機を呼ぶとしたのは、優れた洞察力であった。