論 考

展望なき暴挙

 国際関係が悪化しても、それぞれの国が相手先に設置している大使館や総領事館の活動をお互いに尊重しなければならない。さらにいえば、両国関係が悪化すればするほど出先機関の存在意義が大きくなる。

 相手国の出先機関を受入国が閉鎖するのは、最悪のケースである。仮に戦争の事態に至っても両国のパイプは残しておかねばならない。これは古今東西の歴史の教えである。

 アメリカが、ヒューストンの中国総領事館閉鎖を公表し、中国が成都の米国総領事館を閉鎖する報復に出た。23日のポンペオ国務長官の演説は、いかにもトランプ的アメリカにふさわしい罵詈雑言の内容であった。

 身の丈に合わない権力者の地位に就いた連中が、どんなバカをやるかの見本だ。予断を許さない危険な事態である。さらなるエスカレートになった場合、果たして調停するリーダーが登場するか。調停者が存在しないのは、外交ゲームではなく喧嘩である。剣呑だ。