論 考

不信感を高めないために

 東京の感染者数が少ないのが不思議であった。21日136人、22日138人、23日154人、24日171人、25日212人となった。その間の増加数は順番に、2人、16人、17人、41人と増加し、都知事が深刻な発表をするに至った。

 東京新聞に自衛隊病院に入院していたダイヤモンド・プリンセス号の患者112人(公表は104人分)の研究で、CT検査によって肺の異常発見が70人・67%あった。また、無症状・軽症者84人のうち40人・50%に肺炎の兆候があったという。悪化したのは40人中10人程度である。ここから、無症状・軽微な感染者が多数いると考えざるをえないというの分析である。

 たまたま五輪延期が決まったので、その話題で持ち切りだが、延長するといっても、いつまでと期限を切られるものではない。新聞は、IOCが決定をもたついているのに対して、日本政府が積極的に働きかけたみたいな論調になっているが、実のところ、今回の延長論には何も保証がない。あえていえば、これですんなり実施できるような事情にならなかったから、止めるしかないという意義であって、その意味では、IOCが2週間かけて検討するといった中身をざっと1年後に延長したのである。先延ばし戦略は政府与党の得意とするところである。

 自衛隊病院の研究結果は、素人がみても、まあ、そこそこ理解できる。これから大事なことは、COVID-19に対する、いろいろな知見をきちんと迅速かつ透明性をもって、人々に知らせることに尽きる。そうでないと、買い占め騒動がまたまた大きく発生する危惧がある。為政者のみなさんには、時々刻々、情報を公開する体制を本気で構築してもらいたい。

 すでに、五輪延期が決まったから感染者が増えたのではないかという穿った読みもある。不信感が不信感を生むという事態になるのがいちばん危ない。「ウイルスに打ち勝つ」だとか「完全勝利する」という意味不明の形容詞を使うべきではない。そんなことより、みんなが実体を冷静に把握できるように、地味な活動をしてもらいたい。