週刊RO通信

きちんと情報公開をすべし

NO.1344

 WHO(世界保健機関)が2月28日、COVID19について世界全体の地域別危険性が「非常に高い」と発表した。それに先立って24日に中国での感染ピークは1月23日から2月2日であったと発表した。26日には中国での感染者増411人に対して、それ以外の国での感染者増が427人となり、各国で対策の本腰が入っていないのが危惧されている。

 昨年12月8日に中国湖南省武漢で原因不明の肺炎患者が発生、1月1日華南海鮮市場が閉鎖された。1月初めはヒトからヒトへの感染が不明で、病原もまだ検出されなかった。7日新型コロナウイルスと特定、9日には初の死亡者が出た。13日には中国外で初めてタイで感染者が確認された。

 1月24日にWHOは、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、MERS(中東呼吸器症候群)と同じく、咳・くしゃみによる飛沫や直接接触で感染する危険性があると警告した。同日、フィリピンは武漢市からの航空旅客404人を強制送還した。

 1月25日中国政府は、1月27日から国民の海外旅行禁止・武漢市閉鎖を決定。26日武漢市市長が、封鎖前に500万人が市外に出たと推定されると発表した。日本で関心が高まったのはクルーズ船での集団感染が報道されてからであるが、1月27日から2月2日の間に、マスクの売上が187億円という報道もあり、人々が深刻にうけとめていたことがわかる。

 2月10日、WHOによって新型コロナウイルスがCOVID19と名付けられた。12日には、クルーズ船で203人感染、3,600人が2週間の船内待機をすることが発表された。潜伏期間が終わる時点で全員の検査完了ということで、検査体制の不備が心配された。

 2月13日に、1日から入院していた海外渡航歴のない神奈川県の80代女性が亡くなり、息子のタクシー運転手も感染と発表された。タクシー運転手が1月18夕刻、都内で屋形船(乗客70人・乗員16人)に乗り、2.5時間の宴会をしていた。運転手の発熱は19日、追跡調査の結果、濃厚接触者190人中12人の感染がわかった。(2/29日経)

 2月14日時点で、無症状でも感染することからすでに拡散の危険性あり、クルーズ船では3,600人中検査は500人のみとの報道。医療機関の体制作りの遅れ、感染症専門家会議設置、簡易診断キットの開発は3月末までになどの報道があり、WHOシニアアドバイザー遠藤奈邦子氏の「日本の状況が心配」というコメントも報じられた。(2/14東京)

 日本環境感染学会が医療機関向け「対応ガイド」を発表したのが15日。全国の感染症病床が1,871床あるが、ふだんは多用途使用しているので空きは10%程度だろうという。東京マラソン(3/1)一般参加中止が発表されたのが17日である。この間の報道は隔靴掻痒の感であった。

 医師の岩田健太郎氏が18日に、DMAT(災害派遣医療チーム)メンバーの扱いでクルーズ船に乗り込み、レッドゾーン、グリーンゾーンの区別なく、感染症の専門家が常駐せず、しっかりと船内安全が確保されていないというレポートを、19日にユーチューブで発信した。それを裏付けるように20日には、船内で乗客と接触してない仕事をしていた政府職員2人の感染がわかった。岩田氏の活動が世論を喚起したのは疑いない。

 27日政府は、全国の小中高校を3月2日から春休みまで休校する要請をした。対応は各自治体任せである。政府が本気で取り組んでいないという批判が飛び交うなかで、思い切った対策を打ち出したという世論向け対策と勘繰られても仕方がない。対策の全体像も不明、いかなる分析に基づくかの説明もない。29日時点で、チャーター機帰国・クルーズ船を除く国内感染者は228人(うち死亡5人)である。中国はしっかりせよという論調が少なくなかったが、問題は、国内の感染防止・医療対策にこそありだ。

 国会答弁では質問に正面から答えず、隠したり、先送りが常套手段となっている。見えざるウイルス対策にその手は一切通用しない。国民が慌てふためいていないのは上等だが、過去のパンデミックの記録をみると、的確な情報が発せられないことが事態悪化に拍車をかけた。政府の対策について国民の理解が得られないままに感染が拡大したら剣呑この上ない。