論 考

アーキビスト制度

 文書管理専門職(Archivist)の認証制度が発足する。公文書館、府省庁、自治体などで公文書が適切に保管されているか、残すものは何かなどについて判断する仕事である。

 いわば歴史を記録し、残すべきものを残して、必要に応じて検索・活用できるために専門能力を発揮するわけだ。2025年までに400人養成するという。趣旨はまことに上等である。

 しかし、この制度を、歴史認識が無茶苦茶、公文書のやみくもな破棄、果ては改ざんを生み出して、国民の疑惑がまったく晴れない安倍内閣によって制定されるというところに、わたしとしては単純に、進歩だ、前進だと納得できないのがまことに残念である。

 以前わたしの古い友人の1人が、企業のコンプライアンス室長に任命されて、新設部門でもあり、本人はそれなりに張り切って取り組んだ。ところがどっこい、いよいよ動き出して、社内の会議である問題について意見表明したら、「お前、会社をつぶす気か」というごとき反論が出た。

 企業の監査役会の機能が効果的かというと、これもかなり怪しい。

 公文書管理専門職は、もっと広範かつ歴史的な任務であるが、官僚機構の頂点に立つ内閣が、大方の不信感を浴びているような事情において、せっかくの制度が拍手のなかで出発できないのは情けない。