論 考

ゴッホ

 CNN(1/22)の報道だ。南仏に滞在していたゴッホ(1853~1890)が1889年8月ごろに描いたとされる自画像の真贋が問われていたが、このほど本物だという結果が出た。

 自画像は、ノルウェーのオスロ国立美術館が、およそ100年前に購入していた。1970年代に偽物ではないかという指摘があって、以来半世紀にわたる研究が重ねられた。

 ゴッホは1890年7月29日に亡くなったので、病気と貧困と闘った画家の自画像はほとんど最後のころの本人である。頬はこけているが、目に惹きつけられた。

 手元の『ゴッホの手紙』を読む。終生、ゴッホを支え続けた弟テオに送った手紙である。たぶん、自画像を描いたころのものだと思う一節――

 「(自分がいつも考えているのは)もしたとえ僕が成功しなくても、僕のやりかけていた仕事が続けられるという信念だ。——僕は人の生涯は麦の生涯のような気がしてならない。もし芽を出すために地にまかれなかったら、どうなるだろう、粉にされてパンになってしまう。——たとえ狂った心配な病気に罹ってもこの信念は決してぐらつかない」

 ゴッホの絵画が初めて売れたのは、1890年2月『赤い葡萄畑』で400フランだったそうだ。