論 考

韓国から痛烈な皮肉

 行き詰っている日韓関係改善のために、韓国の文喜相国会議長が「記憶・和解・未来」財団構想を提唱した。元徴用工の慰謝料請求権について、韓国大法院が、1965年日韓請求権協定による補償の範囲外だとした。日本政府は、同協定によって一切日本は関係ないとしている。

 文氏提案の中身は、財団が日韓企業と個人から寄付金を募り、元徴用工に慰謝料を支払うとする。

 「記憶・和解・未来」財団は、ドイツの「記憶・責任・未来」基金にならったものだというが、これは、日本が言うならわかるが、韓国が提唱するというのだから、いかにも奇妙である。しかも、日本側は「(これなら)日韓基本協定に抵触しない」というコメントを発した。

 しかし、日韓請求権協定は1965年であり、その後、1966年に国際人権法(国際人権規約)が決まり、1976年に発効しており、国際人権規約Bによって、「(慰安婦・徴用工など)権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害がおこなわれた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること」とあるので、日韓請求権協定があっても、個人の請求権を国が肩代わりできないのである。

 さらに1991年、外務省条約局長が国会で、「個人の請求権は協定によっても消滅しない」と答弁している。

 日本政府は、これらの事情をまったく無視して、1965年の「日韓請求権協定でお終い」を繰り返しているのだが、国際的にはまったく理屈にならない。まして、韓国側が「記憶・和解・未来」財団を提示したに及んでは、痛烈な皮肉以外のなにものでもない。