論 考

英国労働党と日本の野党の課題

 今回の英国総選挙結果は、従来とは異なって、かなり大きな問題提起をした。保守党政府がEU離脱を2020年末より後へ引きずらない意向を示したが、直ちにポンドが下落した。離脱は決まったものの、そのプロセスは依然として大問題である。

 一方の労働党は、何よりも党体制立て直しが最大懸案である。コービン党首が辞任する。コービン氏の問題点は、直接的には選挙戦略が明快さを欠いた。もう1つは、メディアによる「コービン氏の描写」が一貫して批判的であった。いわく、氏の左派路線に疑問符を突きつけていた。

 当面は、新党首選出が懸案である。たくさん候補者の名前が挙がっていて混沌状態である。やがて絞り込まれるが、注目点としては、「労働党に好印象を持たない労働者」が増えていることだ。

 好印象を持たないというのは、投票結果からして労働者が労働党から離反している。労働者が挙って参加しない労働党があり得るのか。

 翻って、わが国では立憲民主党を中心に野党の再建の途上にある。こちらは、英国よりも一足、いや相当早くから、いまの英国労働党が直面している課題の真っただ中にある。

 かつて、労働者政党を掲げた社会党が衰退して消えたのは1996年であるが、当時からざっと四半世紀、社会党に代わる政党が立ち上がっていない。いわゆる階級的政党に嫌気を感じた気風が背景にある。しかし、労働者を代表する大きな政党が立ち上がらないのは極めて不思議な現象である。

 わが国では、敗戦まで労働者政党も組合も権力によって抑圧されて素直な成長ができなかった。敗戦で、デモクラシーになってようやく労働者の政治的権利がのびのび主張できるようになった。

 それを思えば、労働者の政党というのは、デモクラシーに立って、デモクラシーを毅然として守り育てるという柱を明確にしなければならない。デモクラシーというのは、基本的人権と主権在民を基盤として成り立つ。

 たとえば、原発を巡る考えの違いが労働者政党の一本化を妨害しているというが、その考えの違いがデモクラシーそのものを否定するのではない。次元が違う。だから、なによりも労働者がデモクラシーを背負って立つという柱を構えて、野党の再建に挑戦するべきだ。

 労働者の政党ということになれば、労働組合の積極的参加も実現していかねばならない。わが国は、デモクラシーを破壊することに熱心な自民党が好き放題やっている。労働者が参加するデモクラシー政党を育てる。これしか、わが国がデモクラシー国家として発展する道はない。