論 考

ブレグジットは反普遍性

 かつて世界に雄飛した英国が、縮み志向を選択した。自分がボスなら外へ出るが、そうでなければ閉じこもる、というのは単純かつ幼児的だ。

 インドを植民地にしていた当時、やがてインド独立は必然だろうと読んだカーライル(1795~1881)は、独立を認めない人々に対して、「インドを失うのとシェークスピアの誉れを維持するのと、いずれを選ぶのか」と主張した。

 インドを独立させるのは大国の寛容だが、21世紀に孤高の道を選ぶのは時間を逆回しするのと等しい。

 ゲーテ(1749~1832)は、74歳のとき、28歳のカーライルと親しく書簡を取り交わした。ゲーテは文学を通して普遍的な人間になろうとカーライルに書き綴った。それからざっと100年後のドイツはナチ党が政治権力をほしいままにし、第二次世界大戦へ突っ込んだ。

 人間は、いつも普遍性を求めるか、迷妄の世界に沈没するか、2つの分かれ道にあるらしい。いまは、迷妄へ走っている国と人々が多いような気がする。