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「情報」といかに付き合うべきか

ライフビジョン学会

 ライフビジョン学会総会の学習会、「真実の解明に努力を続けよう」では桜美林大学リベラルアーツ学群メディア専攻・高井潔司教授の基調講演に続けて、参加者全員による、意見交換を行いました。進行は奥井禮喜・ライフビジョン。

[前号までのおさらい]

――2016年は米国大統領選挙を口火として、「Post Truth」という言葉が登場した。それまでの「真実」こそ「正義」という価値観に疑問府がつけられ、「真実」の信ぴょう性、定義のやり直しを問われることになった。

――若い人はマスコミ不信感があり、マスコミは事実を知っていて、隠して報道していると思っている。そうではない、ジャーナリズムは相手が隠していることを探して、その過程で圧力を受けたりしながら書くものだ。

――事実は用意されて降ってくるものでも、隠せるものでもない。求めれば得られるものではない、報道の自由があれば何でも分かるのではない。ジャーナリストはわからないこと、相手が隠していることを追いかけて、真実を極めるのが仕事だ。


 私たちはいま、おびただしい量の「情報」に対面している。質でいえば作り話から真実まで、手段でいえば紙から電波まで、その発信者は一定の専門性を持つプロのジャーナリストから、無数の個人のツブヤキにまで広がった。現代人は情報の生産者であり消費者となった。

 ここに新しい問題が発生している。一体何が、真実なのか。

発信は紙からデジタルに

 意見交換では最初に、ネット世代の参加者Oさんが発言した。

 参加者Oさん 私はラインニュースの政治情報を見ています。今の大学生があれを本当だと思っているのか、疑問に思っています。その一方で今までの新聞など、オールドメディアにはないものが出ている。あるいはメディアリテラシーの強い政治家が自分の考えを発信する場として使い、意識の高い学生が主体的に取りに行くものだと思っています。

 高井教授 私はラインニュースを見ているが見出しだけで、そういうことがあったのかという程度です。社会の出来事に関心が無い。見ても世の中をどう考えて良いか、との発想が欠けている。それよりファッションだとかいろいろ、そちらを見ています。

 Oさん ネットが全く無い世代でも、新聞は見出ししか読まない人がいます。(笑い)

 高井教授 これからは紙がなくなって発信の仕方も変わってくる。今まで新聞テレビがどんな役割で、原理で作られていたのかというと、事実を確かめて取材する組織活動です。これからは、Yahooの原理はこう、ラインはこうと、それぞれの仕組みを知り、情報を見極める、そのときどういう環境を作っていくのかは、若いあなた方の希望、考え、使い方次第なのだと、私は授業で学生たちに教えています。

 例えば米国では、新聞に代わるネット発信メディアがいっぱいできてきて、新聞社が倒産しています。そこにあなた方若い人が加わり、情報発信ルールはあなた方が作る。

 アメリカのようにネットメディアに対して寄付が免税されると、日本でもファンドを出してくれる人が現れて、ネットメディアが経営基盤と取材組織をもって発信できるような、そんな制度をどうやって作っていくのかを考える時ですね。

事実や真実は、主観を排除できない 

 高井教授 新聞が今までそんなにすばらしい記事を発表してきたのかというと、そうでもない。ジャーナリズムの組織は戦後にできて、以来、こんなにすばらしい報道をしてきたから、そういう組織を持たなければと一方で言いつつ、でも新聞はイラク戦争では騙されて、戦争に協力した。

 学生たちは私の言うことを「矛盾だらけだ」と言うのだが、情報は常に動いているものなので矛盾した議論になる。朝日も産経も誤報を起こします。両社のシステムはどう違うのかとかを考えてもらいたいのですが、事実とか真実とかは動いているものなので矛盾した議論になってしまい、学生は理屈に付いてきてくれないのです。

 Oさん 「正しい」の前提には価値観が入る。誰にとって正しいのか。(そうなんです)例えば3.11の時は何人死にましたと数字が常にアップデイトされていた。これは客観的事実なのでブレない。最初に出た300人という数字がどんどん更新されていくが、それが間違っていたというより、そこまでわかったという段階の報道です。(そうです)

 高井教授 授業ではどちらが正しいかの話に受けとめられるが、情報とはそういうもので、マスメディアはこれまで、このように扱ってきたのです。

 ネットは危ないといわれるが実は新聞だって、400年の歴史で350年ぐらいはずっと危険なものでした。やっと戦後、それではいけないと自覚して今に至る。それでもいっぱい間違えるし操作されて、とんでもない結果を引き起こすことにもなっている。

 ネットメディアは今は危険だが、まだ、たかだか30年の歴史です。ラインなんて2010年の登場だし、フェイスブックも随分変わってきた。変わる中で、これまでのマスメディアの誤りを勉強することで、これからのヒントになる。だから勉強してくれませんかと、授業で学生たちに教えています。(笑い)

 情報の価値観は中立でもなんでもない

 高井教授 でもネットのほうが簡単な事実だけで中立だと、それを解説などし始めたら主観が出ます。中立であるかのように見えている情報も中立ではない。情報は中立ではありえないのです。

 Oさん そもそも情報は隠すことができます。

 高井教授 それだけの事実しか伝えていないのは、隠していることなのです。

 Oさん 新聞は文庫で一冊分の情報を切り取ると聞いたことがありますが、1冊分を切り取ること自体も主観が入る行為だと思っています。

 高井教授 そういうものだからむしろ、情報各社はその主観を競い合っている。

 鏡のように全て事実を映しています、というのでは皆同じものになってしまうし、何の価値も無い。情報とは主観的に選択しながらどう真実に近づいていくか、どれだけ説得力があるかによって、お金を払う価値を生むものです。

 Oさん ネット情報は無料か有料かによって話が違います。有料登録のネット情報はちゃんとしたジャーナリストや経営者が自分で考えたことを発信しています。

 高井教授 アメリカの新聞社の規模は数万から数十万部まであり、新聞を止めてネットに転換するものもある。ニューヨークタイムズも新聞は50万部ぐらいで、ネット読者が150万部ぐらいと、今では比率が入れ代わってきています。

 朝日新聞は発行部数公称600万というが、ある情報ではもう400万部しか出ていないと言います。世界第二位の新聞だから経営基盤はあるがそれでも、これまでのような陣容の確保、取材のネットワークではやっていけなくなっています。

 私が読売新聞の国際報道担当の時代には、読売の読者は1千万人でも国際面読者は20万人、でも国際面の読者はレベルが高い人だから一つひとつチェックする、それが政治を動かしている、良いものを作れと教えられたものです。

ステレオタイプ

 会員Iさん 事実を追いかける人の主観が入るとすると、同じ事件でもA社とB社、書いた人によって記事が違ってきませんか。

 高井教授 それは人間につきものです。逆に、読む人もステレオタイプで先入観で読むから、記者が事実を書いても読者が怒ることがあります。

 例えば天安門事件では戦車が来て学生を踏み潰し、たくさんの人が殺された、中国は怖い国だとのイメージを持っているのに、いや、あとからしっかり検証してみると、天安門事件では一人の虐殺もなかったと現地にいた私が言うと、学生はびっくりします。聞く側にもステレオタイプがあり、そう言ってほしいと期待している。記者の人たちも、やっぱり軍は嘘をついてたくさん殺したんだと。私もそう思っていたし、でも現実を見ていないし…

 現場で出てくる話では、たくさんの人が死んだのだと学生が言ってくる。それならばと私も、誤報した。えらそうに言うが、自分もステレオタイプにまみれた記事をいっぱい書いているのです。

 リップマンがよく言っています。ステレオタイプを使ってしまうのは、真実を書くスペースを与えられていないのだ。ステレオタイプを打ち破るような原稿を書こうとするとどうしても長くなる、と。鄧小平が亡くなった時、本社は中国は混乱すると書けと指示してきましたが、日本ではこう言われているけれど、しかし、こういう理由で、混乱はしないと書きました。それで記事の量は通常の倍になってしまった。

「NEWS EYE」

 奥井禮喜・ライフビジョン ステレオタイプでは、どういう視点で問題を設定するかがある。そこで記事の方向が変わってくる。それを記者はどこで勉強するのですか。

 高井教授 それは一人ひとりの経験や、先輩と議論することで勉強します。私は外語大の中国語科卒業だから将来は国際部ですが、先輩から、新聞記者としての「NEWS EYE」は社会部で3年勉強してから国際部へ行けとアドバイスされました。

 その一つに、マンション屋上から子供が落ちた事故がありました。今から35年ぐらい前で、皆が賃貸アパートから自己購入マンションの時代に変わり始めた時代のことでした。この事故は誰の責任か。

 共有区分の屋上の管理責任を問われるのは入居者だが、そんな意識はまだその時代にはなかった。「それがニュースなんだ」と、そのとき私は分かった。時代が変わって、これからマンションの所有者になって行く私たちはこういう責任まで負う、それを問う裁判になるのだから、絶対にニュースになる、と。

 それから子供のお父さんと訴訟までずっと付き合って、訴訟を起こすときには他の人はもう忘れていた事故なのだが、この現象をどう伝えるか。そこに隠された意味を引き出すのは取材に行き、話を聞くこと。そこが社会部にいて鍛えられたことでした。事故当初に書いたベタ記事はボツになったが半年後、その訴訟記事は社会面トップになりました。このようにニュースを、時代の変化などもっと大きな背景の中でその意味を見ていくというNEWSEYEが大切です。

 奥井禮喜 日経新聞の記者は入社したとき、御用聞きの仕方だけ教えてくれたそうです。

 高井教授 御用聞きの仕方も教えてくれないですね。顔写真取って来いといわれて、被害者の家に行き、肩身の狭さを我慢して写真を貸してもらうとか。それをもう少し咀嚼すれば、写真を持っている人はその人のことを一番知っている人なのだから、その人の話を聞きに行く、そのついでに写真をもらってこいという意味なのですが。

メディアと政局

 奥井禮喜 知識と知恵と、それと同じレベルの道徳倫理を身に付けているかは別です。今の国会は知識と知恵を悪用して好き放題しようとしています。

 高井教授 奥井さんが「辞めてもらうしかない」と言うほどの今の政治状況は、以前ならば読売もここまで来たらひどいとして、朝日毎日と一致揃って倒閣に出たものですが、今は、社主の渡辺恒雄(ナベツネ)は憲法改正を自分がやったとの歴史的記録を残したい。

 90年はじめごろ、読売新聞は憲法改正試案を出した。この論議を始めたのは自分たちなのだ、それを実現するところに来ているから、安倍とタグマッチを組むのです。

 ナベツネは歴史修正主義者ではありません。初年兵のときにビンタを食らって憎しみがあるから、絶対、軍国主義者はダメなのです。自分が首相を動かして憲法改正をなし遂げて、俺より偉い首相はいなかったと、皆の前で平気で言う。彼の目標は誰も出来なかった憲法を改正することにあるのです。

 会員Oさん 安倍さんが国会答弁で読売新聞を読めと言ったが、あれがどうして問題にならないのでしょうねぇ。

 高井教授 問題になっているのだが、首相は憲法を守らなければならない立場だから「自民党総裁として」と言い、読売新聞記事では総裁とは書かず「首相インタビュー」と使い分けている。嘘を平気で言う「ポスト真実」の話の通りです。

 奥井禮喜 新聞が「与野党に公正に接する」というが、権力を持つ側にはプレッシャーをかけなければならない。与野党均等に、等距離で見たのでは与党のやり放題になってしまいます。

 会員Sさん 読売憲法改正と安倍さんの方向性は同じなのですか。

 高井教授 改正という方向は同じでも内容が違います。中身より何より、70年も動かなかったものを自分の手で動かしたと歴史を作りたい、ナベツネは90歳近くになっていまだに権力に執心しているのです。

 反日デモの時でも、日本との関係改善の一つの方法として、歴史問題をきちんと認めて、出版して、その本は新華社に載っています。

 読売新聞社は2005年、渡辺恒雄グループ本社会長・主筆の提唱により、社内に「戦争責任検証委員会」を設置した。検証委員会は、満州事変から日中戦争、太平洋戦争に至る原因や経過、さらには当時の政治・軍事指導者たちの責任の所在について検証作業を行い、約1年かけて本紙紙面に特集記事の形で掲載した。紙面に掲載された内容は、06年に中央公論新社から『検証 戦争責任』と題して書籍化され、中国語版は07年7月に刊行され、国営新華社通信の出版部門にあたる新華出版社が中国国内で販売した。  http://www.yomiuri.co.jp/special/70yrs/

 以前も別の転機がありました。これは私も関係しています。

 日中国交回復20周年の天皇訪中にはものすごい反対がありました。宮沢官房長官が一時、半年間、新聞に報道しないでくれと言いにきたとき、外報部の次長だった私は宮沢さんを玄関に迎えて、論説委員会にご案内しました。

 私は論説委員長に、――私はエリザベス女王が上海にいるときに目撃して、中国人がいかに、女王や天皇にあこがれているかを良く知っている。天皇が訪中しても、石を投げたり卵を投げたりすることはありません。中国が大丈夫だと保障している――、と言って、読売の論調を変えるように進言しました。結果、読売の論調も変わり、天皇訪中は実現しました。

 読売新聞に勤めて良かったと思うのは、読売はブレない、ブレるときは物事が変わる。(そうそう)読売が変われば日本は変わるかもしれない。そこが面白いのです。

読者参加でメディアを変える

 会員Sさん 最近は新聞一面の8割が政府発表高官記事で埋められています。新聞社は「私たちはこう思うから、反安倍の記事を書く」と言ってくれた方が分かりやすい。そういう潔さも必要だと思います。

 高井教授 いま東京新聞はそれに移りつつあるが、こんな話もあります。

 原子力発電所に大手新聞が現地に潜入取材した。それを編集局長に見せたら怒られるので、最終版に隠して特集をやった。翌日編集局長が怒ったが、読者の賛同反応に社の方針が動いたと、そういうこともあります。

 東京新聞も神奈川新聞も、新聞は赤字で苦しいが、それゆえにそういうものを出す。日本の新聞も自分の売り物、主張をどう出すかに変わってくればよいのですが。今は護送船団、政府に守ってもらいながらの状況にある。

 そうなるとインターネットでもよいではないかと言われてしまうのだが、新聞は多少でも、真実に迫ろうという姿勢と組織を持っているのです。

 新聞を読む人が少なくなっていく、影響力がなくなっていく。もう紙で新聞社を立て直すのは不可能です。だからインターネットで組織をちゃんと持ちながら、質の高い情報を発信してどう変わっていくか。減ったとはいえ朝日は数百万部と、世界にそんな新聞はありません。

 会員Iさん 自分たちの声の発信は効果も方法も分からないのですが、読者反響で社の方針が変わる、ということは、例えばある記事に対して支持電話、投稿する、購入するなど行動することが、新聞社を変えていくことになるのですか。

 高井教授 そうです、新聞は圧力に弱いのです。自民党とか右翼とか暴力団とか、逆の圧力をかける人も多い。かつては部落解放運動、これには日本の新聞社はまったく弱い。

 だから悪いことだけでなく、良いものも良いと言えばよいのです。新聞社の中ではその反応、反響を取り上げようと、議論をしながら作り上げています。

 東京の本社にいるとそういうのが伝わってこないのですが、地方紙は読者と一緒にいて、記事の取材元についても、「あっちの人からも聞かなきゃだめだ」とか、周りの人から反響がどんどん来ると、やりにくいけどやりがいがあります。

記者もサラリーマン

 高井教授 新聞記者は組織でなく、はみ出した人ばかりで作っていた時代がありました。それを思うと今はもっと、自分の意見を言うべきだと思います。

 私の授業で、「記者の中にもいろいろ意見の違いがあるはずで、どうやって新聞を作るんですか」との質問が出ました。「議論を戦わせて作るんだ」と答えたのだが、実際はほとんど言いなりの人が多い。なかには時々、意見を言うのが仕事だという人がいて、私もそういう立場で仕事をしていました。

 会員Nさん ここまでの話で「ネットが取材組織を持つ」「地方新聞は地域の批判や意見を生かし健全性を保つ」「読者がどんどんメディアにアップするなどインタラクティブに」、などとヒントをいただきました。それを使って進化した、高質なメディアになっていく新しいスキームを作ることはあるのでしょうか。

 高井教授 日本ではなかなか無いですね。新聞社を辞めて新しいインターネットのメディアに入っている人がいますが、既存の新聞がまだ強いので経営がうまくいかない。やっても上質な発信が、1-2回はできるかもしれないが、継続的にするためには100人ぐらいの取材する人が必要です。

 それをアメリカでは財団の寄付だとか、政治だけに専門化するなどの動きが米欧で起きてきています。

 ライブドアもよいブロガーを集めて評論はするのだが、やはり事実を取材したうえで議論しあわないと説得力が無い。新聞がそれをできているとはとても言えないが、それをする体制を取っています。

 上の言いなりになるような記者ばかりだとか、体制が機能していないこともある。取材組織も持たないで良い評論をしたにしても、それは新聞情報などから知った情報で議論しているわけだから、その大本がなくなってしまえば、基礎が脆弱化していきます。

 ネットメディアがそれなりのきちんとした取材組織を持ち、大きくなくてもよいから環境問題だけとか専門化し特化して、それに対してお金を払うようにする。

 情報にはコストがかかっている。タダならば広告料からカネが出ている。それさえも出ていないようなものだと、読んで面白くない。良いものには金がかかっているのです。

 参加者Kさん 今の新聞にはそれが無いのですか。

 高井教授 日経新聞がイギリスのフィナンシャルタイムズを大金で買収したのも、そういう方向性を指向していると言われています。いま有料読者50万人ぐらいでしょうか。

 逆に言うと日経は経済情報として、金を払ってもよい情報を提供できている。しかし一般娯楽、政治社会に金を払ってまで見るか。今現在400万部、800万部の新聞があり、家庭配達の組織があって、これにも経費がかかっている。これを壊してネットには移れない。だから中途半端に経営が成り立っている新聞は動きがとれないのです。

 参加者Kさん 取材記者、発行部数を維持するために、経営の観点からはどんなことがありますか?

 高井教授 朝日はやっているが、ネット読者30万人から伸びていない。ニューヨークタイムズは英語だから、世界中で読めるようになる、残念ながら日本の新聞は日本語がネックになって読まれない。

 神奈川新聞はスマホで情報は横浜ベイスターズの取材をしっかして、月に300円とか、有料販売する。神奈川新聞は早くからネットに飛び込んでいる。

 切り売りする方法もあるが、スポーツや芸能ばかりで、売り物の政治が売れない。各社の社長たちは政治部出身の人たちだから、そういうことを好まない。

 日本の新聞は“押し売り新聞”で、本当に読んでいる人はどれぐらいいるのだろう。学生たちの家では新聞を取っているが、チラシ広告のために、断りにくいからしょうがないかと、政治もテレビ欄も読まない新聞を取っている。あとは6か月取ればジャイアンツの切符上げますという、習慣づけのためにやっているんだ、と。(笑い)みんな納得してくれる。

 北欧の新聞も強い。家庭配達比率は日本と同じく高くて、スウェーデンでは政府が新聞に補助金を出している。新聞を独占させないために、二番手の新聞にカネを出して、競争させるのだと、発想が違う。

 参加者Kさん 北欧は商業でも何でも、一番強い会社には補助金を出さない、独占させないために二番手三番手に補助し、同じ面積の店を左右に二つ作るのだそうです。これで私たちは資本主義ですと。フィンランドの話です。

 会員Iさん 日本の選挙もそうすればよい。自民と野党と大きな差のつかないように。(笑い)

 会員Nさん 資本主義の問題を解決するのは政治しかできないと思います。

  奥井禮喜  まとまるのは議論の結果です。二つでなくても多党化に賛成です。その前に、日本人はもっと議論しなければならない。この国は戦前から見ざる言わざる聞かざる、上意下達の国だから。人前でものを言わない癖が付いている。

 デモクラシーにコストがかかるのは鉄則、原則だ。手を抜いてはダメなのです。

 会員Oさん 安倍政権がまだまだ続くのだろうか。小選挙区制の影響が大きいと思うが、これが変わる可能性はないのでしょうか。
 高井教授 これでは日本の民主主義は変わらないと、世論が変わっていかない限り、いまの政権は変える気は無いし、自分たちが独占している政治を手放さない。
   奥井禮喜 民主党が政権を取った2009年8月31日、読売新聞が親切な社説を書いています。格差をなくせとか5つぐらい書いた中の一つに、官僚と対決するな、とありました。民主党は失政したというが、官僚にやられたのだと思います。

  奥井禮喜 今回のテーマは、今の日本社会はなんとなくいやな雰囲気だと、皆が思っているだろうと企画してみたが、あまり思っていなかったかな?。
 今は転換期とか過渡期、踊り場と表現するが、基本的に、日本人は昔から、社会に対してアパシー、距離を置いておいた方が安全だという意識が強い。
 普通の勤め人は忙しいから毎日2時間も3時間も新聞を読んではいられないが、ニュースはメモを取ってつないで見ないと本当のことは読めないだろう。政府には秘密が多いが外交関係は特に秘密が多いから、新聞記事も、本当に本当のところは載っていない可能性がある。 

 もう一つ、世論は幻、世論なんて危ないものだ。ツイッターが無い時代でも、うわさが繋がって、一つの世論を作る。だからたまにはこのように集まって、意見交換したら、かなり気が付くことが多いので、これからも呼び掛けたい。
 高井さん、ありがとうございました。(拍手)  文責編集部

ライフビジョン学会総会の学習会「真実の解明に努力を続けよう」全報告は↓

 1.目撃者として、推進者として       2017年6月1日号

 2.事実の解明に努力を続けよう       2017年7月1日号

 3.真実の解明に努力を続けよう Talk&Talk  2017年8月1日号